本研究は、患者の価値観やニーズ、ライフスタイルを踏まえながら医療者と協働で退院後の食生活(自己管理)の在り方を決定する支援;「共有意思決定支援」を促進する方策の検討、提案を目指してきた。 最終年度(令和4年度)は、以下3つの取り組みから、管理栄養士を中心とした専門職種が、退院時に向けた食支援において、必要な共有意思決定支援を推進するための基盤を構築し提案した。 1)入院医療機関で退院時支援に携わる管理栄養士を対象とした調査結果のとりまとめ: 令和3年度にWeb上で実施した質問票調査の結果をもとに、管理栄養士が退院時支援で患者と話し合う(共有意思決定支援する)ことが望まれる内容や、それを現在の業務で促進する上での課題を整理し、「第22回国際栄養学会議22nd IUNS-ICN」での口頭発表、「日本栄養士会雑誌」への論文投稿を行った。 2)高齢化が進む地域住民を対象とした、食生活の実態とニーズの把握:退院後の生活の場となる地域で、特に高齢者の食生活の実態(入院中の食事と異なる部分など)や、望むような食生活を送る上で必要とする支援を検討するため、高齢化が進む地域住民を対象に、質問票調査を実施した。その結果、1日3食とれても、食事の質(食品の多様性)が低い者が一定数おり、管理栄養士と関わりたくても関われない者が9割程度いる実態がうかがえた。本研究の結果は、「第26回病態栄養学会」で口頭発表し、論文投稿につなげた。 3)上記結果に基づく、退院時食支援冊子の作成:1)2)の結果をもとに、共有意思決定支援の実践を促すために提唱されたモデル;3トークモデルを用い、各ステップ(チームトーク、オプショントーク、ディシジョントーク)に相応する会話を導ける冊子を作成した。
|