研究実績の概要 |
本研究は、働く意欲のあるがん患者が就労を継続する上で影響を与えている要因を特定することを目的とした。就労困難リスクを上げる要因は、AYA世代、休職期間の長期化、倦怠感、呼吸困難、経済的問題であった。就労困難リスクを下げる要因は、世帯収入1,000万円以上、欠勤期間7ヶ月未満、役割機能があるであった。 本結果から、倦怠感や呼吸困難などの症状を緩和し、休職期間が7カ月を超えないように支援することが、働く意欲のあるがん患者が就労を継続する上で重要であることが示唆された。がん患者が就労を継続する上で、制度といった経済的支援に限定することなく、心理・社会・身体的支援が不可欠であることが明らかになった。
研究成果の学術的意義や社会的意義について、2023年4月、第4期がん対策推進基本計画が策定され、第3期に続き「がんとの共生」として就労支援が盛り込まれている。治療や支持療法の発展と共に今後益々治療と仕事の両立支援が重要になると考える。治療の場所が入院から外来にシフトした現代、本研究参加者のように治療と仕事を両立しながら生活されている方々が増えている。本研究は、国内のがん患者約500人を対象にした研究であり、すべてのがん患者の就労に影響を与える要因を示すことができたとは言い難い。しかしながら、本研究は、がん患者の就労継続に影響を与えている要因が明らかになったことにより、がん患者が治療と仕事を両立していく上で具体的な支援を考える一助になると考える。
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