研究実績の概要 |
従来の口腔疾患や口腔衛生状態の評価法は煩雑で多項目に渡り、歯科専門職による評価が必須であるためスクリーニングとしての臨床応用のハードルは高い。本研究では、口腔疾患の兆候を迅速に探知可能なスクリーニング法を模索するため、非侵襲的に採取できる唾液やプラークを試料とし解析を行った。 当該年度では、前年度に引き続き新型コロナウィルス感染症の発症・重症化リスクの高い高齢者以外を対象とし、口腔内状態を反映する簡便なスクリーニング法の探索において一定の進捗を得た。 口腔衛生状態評価の有効性を比較するため、当該年度では、新たに10,20,30代の若年層の矯正治療患者を対象者として被験者数を増やし、また従来型のマルチブラケット装置とに加え、新たに、マウスピース型矯正装置での矯正治療患者を対象とし、研究を行った。矯正治療患者は、口腔内装置の複雑さから口腔清掃状態が悪化しやすいことに着目し、矯正治療患者を「口腔内疾患ハイリスク群」とし、口腔清掃状態をより明確に評価できるスクリーニング法を見出せるのではないかと考えた。また、矯正装置の違いによるリスクを明らかにすることを目的とした。解析の結果、矯正歯科治療中の患者において、唾液検査で検出される因子と比較し、CariScreenを用いたATP測定法で示されるう蝕リスクは、より特異的なリスク因子である可能性がある。 また、代表的な歯科疾患であるう蝕に対する新しいスクリーニング法を見出すことを目的とし、電子顕微鏡技術を用い、歯を構成するアパタイト結晶の微細構造解析を行った。解析結果から、従来では常識とされていたアパタイト結晶の生成経路以外に新たな経路の存在が示唆された。この研究成果は、う蝕の早期発見だけでなく、酸蝕症やエナメル質形成不全、斑状歯などアパタイト結晶の構造破壊が起こる口腔疾患に関して予防的・治療的アプローチの一助となる可能性がある。
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