研究課題/領域番号 |
19K24269
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
鈴木 みづほ 東海大学, 医学部, 助教 (00845521)
|
研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
キーワード | 遺伝情報の管理 / 遺伝子例外主義 / リテラシー / 遺伝カウンセリング |
研究実績の概要 |
代表的な日本の医療機関において、遺伝情報取り扱いの実態と、遺伝情報の管理に関する医師の考えについて、具体的には以下の方法で調査を実施した。 【方法】2020年2月1日から臨床遺伝専門医制度委員会の認定研修施設(90施設)のうち、それぞれの施設の指導責任医、あるいは、情報管理体制について知悉した臨床遺伝専門医20名を対象に所属施設での半構成的面接法でのインタビュー調査を開始した。インタビューデータは録音し、逐語録を作成している。 【結果と考察】2020年4月現在までにインタビューを実施した施設は15施設(大学病院11施設、がん専門病院4施設)となり、対象者ごとの逐語録から調査結果をまとめている。残る5施設について今後の調査を予定している。全ての施設に電子カルテが導入されているが、遺伝子診療部門での紙カルテも併用使用は多数を占めた。電子カルテに記載しない基準は、未発症、バリアント名、自由診療など、各施設で異なっていた。また全て遺伝子関連情報を電子カルテに載せるべきであると答えた医師は15施設中8名であった。日本の遺伝医療の中核となる医療施設においても現在も尚、遺伝子関連情報の取り扱いは多様であった。その背景として、臨床遺伝専門医の専門とする診療科(小児科や腫瘍内科等)の違いや遺伝子例外主義に対する考え方、医療者リテラシーに対する信頼度の差異などが影響している可能性が示唆された。
この結果を取りまとめ、2020年7月に開催予定の第44回日本遺伝カウンセリング学会学術集会に演題を提出した。また今回のインタビュー調査の結果より、項目を厳選した上で2020年度に大規模な全国アンケート調査を実施する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
インタビューの対象を日本を代表する遺伝子診療部門の科長、中心となる臨床遺伝専門医に限定した為、日程調整に時間を要した。また研究半ばで深刻な新型コロナウイルス感染拡大があり、先方との調整、移動手段の安全確保の問題や対人での密なインタビュー調査を避ける必要が出てきた。 対応としては、今回の研究活動による新型コロナウイルス感染拡大防止のために臨床研究変更申請を行い、2020年3月26日よりWebでのインタビュー調査にも対応が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
インタビュー調査で得られた回答から2つの視点での分析を開始する。 1)対象施設の現在の遺伝情報管理の実態についてをまとめる 2)インタビュイーの主観的に基づく回答に対しては、対象者ごとに逐語録からキーとなる発言ごとにデータの断片化を行い、続いて文脈を損なわないようにコード化を行う。その後、類似したコードごとに、サブカテゴリー化、カテゴリー化を行う。分析結果の確実性の担保のため、語られた内容の抽象化・概念化について、最初にカテゴリー化を行なった研究者とは別の研究者とともに全員がコーディングに合意するまで検討を繰り返す。これらの分析により、遺伝学的検査結果の診療録記載に関する問題点を質的に明らかにするともに、今後実施を予定している全国規模の調査に用いるアンケート項目を作成する。 この後、アンケート調査の研究申請と実施を推進していく。得られた結果については、学会での発表と論文投稿を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究半ばで深刻な新型コロナウイルス感染拡大があり、先方との調整、移動手段の安全確保の問題や対人での密なインタビュー調査を避ける必要が出てきた。対応として、今回の研究活動による新型コロナウイルス感染拡大防止のために、臨床研究変更申請を行い、2020年3月26日よりWebでのインタビュー調査にも対応が可能となった。このため、研究者の遠方までの移動が半減し、交通費が余剰した。また研究対象者から謝金に対する辞退の申し出も15施設中半数程度あり、研究全体が計画より少し遅れていることも合わせて助成金の使用額に影響してると考えている。今後もインタビューでの調査を残り5施設に対して実施するとともに、データの解析、大規模なアンケート調査の実施を予定しているため、翌年度分では多大の郵送物が生じると思われる。その煩雑な作業に伴った補助としての人件費、管理費、ソフトの購入などに充填していきたいと考えている。
|