本研究では、腹部臓器の腫瘍を有し、当院の消化器外科で手術予定となった患者で周術期リハビリテーションが処方された患者を対象に、手術前の健康リテラシーが手術後の短期的なアウトカムに関係するかどうかを検証した。 健康リテラシーの評価には、健康リテラシーの包括的な尺度であるThe European Health Literacy Survey Questionnaire (HLS-EU-Q47)の日本語版を用いた。手術後の短期的な主要アウトカムとしては、手術前から退院時点で身体機能(30秒立ち上がり検査、快適歩行速度、握力)、健康関連Quality of life(HR-QoL)が臨床的に有意に低下したかどうかとした。なお、HR-QoLはthe EuroQol 5-dimension 5-level (EQ-5D-5L) and EuroQol-visual analog scale (EQ-VAS)を用いて測定した。その他のアウトカムとして、退院から90日までの理由を問わない再入院(予定入院を除く)、手術後から退院時までの術後合併症を取得した。解析は、対象者の手術前の年齢や性別、体格、腫瘍の部位、腫瘍のステージ、フレイルの有無、身体機能、身体活動、HR-QOLなどの影響を考慮した状態で行った。 最終的に97名が解析対象となった。前述の手術前の対象者の特性を考慮した結果、手術前の健康リテラシーと手術後の短期的なアウトカムとの間に明らかな関係性は認められなかった。 これらの結果は、周術期でリハビリテーションが行われている腹部臓器の腫瘍を有する患者においては、健康リテラシーは手術後の短期的なアウトカムに強く影響しない可能性が示された。本研究の結果は、Journal of Geriatric Oncology誌に掲載済みである。
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