研究課題/領域番号 |
19K24280
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤本 知臣 筑波大学, 体育系, 研究員 (70847798)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 低体温症 / 皮膚温度感覚 / 深部体温 / 運動 |
研究実績の概要 |
本研究では、運動時にもかかわらず生じうる低体温症の発症メカニズムの解明および予防のための基盤となる基礎研究として、運動中体温低下時の体温調節反応の特性とその調節メカニズムの解明を目的とし、特に運動時の温度感覚に着目して検討するものである。 これまで、常体温時の皮膚温度感覚は、安静時よりも運動時に鈍くなることが報告されているが、我々の先行研究において、皮膚温が一定の場合、深部体温の低下によっても温度感覚が低下した(冷たく感じる) ことから、実際に深部体温が低下した場合に温度感覚が運動によりどのような影響を受けるのかについては明らかでない。 そこで本年度は、運動が体温低下時の温度感覚に及ぼす影響について検討した。実験は、安静条件および運動条件の2 条件を行い、運動条件では低強度の自転車運動を行った。実験中、被験者は下半身を冷水に浸水させ、深部体温を段階的に低下させ、常体温時、常体温時から深部体温0.5℃ および1.0℃低下時の3 時点において全身および皮膚温度感覚を測定した。測定項目は、食道温、皮膚温、呼気ガスパラメーター (酸素摂取量、換気量など)、循環パラメーター (心拍数、動脈血圧)、全身および皮膚温度感覚とした。皮膚温度感覚は、温度プローブを皮膚に押し当て、プローブ温度を徐々に変化させたときに、温度の変化を感じた時点のプローブ温度を測定することで算出した。 その結果、低強度運動によって皮膚温度感覚は変化しなかったが、体温低下時の全身の温度感覚が鈍化 (寒さを感じにくくなる) した。これらの結果から、運動によって体温低下時には皮膚だけではなく深部体温低下に対する感覚が鈍化する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、運動が体温低下時の温度感覚に及ぼす影響について検討した。本研究では、下半身までの冷浸水を用いて徐々に深部体温を徐々に低下させ、安静時と運動時の皮膚および全身の温度感覚を測定した。その結果、本研究でもちいた低強度運動によってはいずれの深部体温においても皮膚温度感覚は影響を受なかった。その一方で、低強度運動であっても全身の温度感覚は鈍化し、これらの反応は特に深部体温の低下にともない顕著になっていった。今回の研究結果から、運動によって、特に深部体温低下時に全身の温度感覚が鈍化することが明らかになった。この結果は、運動によって体温低下時のふるえが抑制された我々の先行研究の結果と一致しており、これが運動時においても発症する低体温症の発症メカニズムの1つである可能性が考えられる。次年度以降、運動がどのようなメカニズムで温度感覚を鈍化させるのかを検討することで、運動時にもかかわらず生じうる低体温症の発症メカニズムの解明につながることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通り、次年度は運動による温度感覚鈍化のメカニズムの解明を目的として、運動指令および近畿会受容器反射が体温低下時の温度感覚に及ぼす影響について検討する。本年度の研究から、運動は特に深部体温低下時の温度感覚に影響を及ぼすことが明らかになったことから、体温低下時の温度感覚に絞って検討することも想定して、研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、大学内の若手研究者支援型研究費も受給していたため、本研究費は実験設備を整えるための物品のみに使用した。次年度においては、計画として出しているものに加え、実験環境においてより高精度に水温管理を行うための物品に使用する予定である。
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