研究課題/領域番号 |
19K24285
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田畑 阿美 京都大学, 医学研究科, 助教 (00844391)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 小児脳腫瘍 / 認知機能 / 協調運動 / 適応行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、小児脳腫瘍患者の精神・認知機能、協調運動および家庭・学校生活における適応行動について調査し、小児脳腫瘍患者の適応行動に影響する要因を明らかにすることである。さらに、経時的な調査を行い、病型の違いによる、精神・認知機能、協調運動および家庭・学校生活における適応行動の経時的変化の特徴を明らかにすることを目指す。 2019年度には、協調運動の質的評価に用いる動作エントリーパッケージ(OTJS-DUSK-EP)および精神・認知機能、協調運動、適応行動の評価に用いる評価用紙、データ保管用のハードディスクなどを購入するとともに実験補助者の選定・雇用を行う研究実施計画のもと、研究に必要な資材などの購入を行い、研究を滞りなく開始した。 2年間の本補助事業期間内には、個別症例に対する復学支援、ケースシリーズ報告を行うとともに、適応行動評価の結果とその他の調査項目の結果との関連性を回帰分析により検討し、小児脳腫瘍患者の適応行動に影響する要因の検討を行う予定であり、2019年度には、新規症例のリクルートおよびデータ収集を開始した。 具体的には、京都大学医学部附属病院で治療予定の新規の小児脳腫瘍患者に対して、認知機能および協調運動の評価(治療開始前評価)を行い、評価結果に基づいたフィードバックおよびリハビリテーションを実施し、個別症例への復学支援を行った。 また、復学後の小児脳腫瘍患者の精神・認知機能、協調運動および家庭・学校生活における適応行動について調査し、個別症例への復学支援を行うとともに、第61回日本小児血液・がん学会学術集会(広島)、第43回日本高次脳機能障害学会(仙台)において、資料・情報収集と成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗状況として、新規発症の小児脳腫瘍患者のリクルートおよびデータ収集に遅れが生じている。 具体的には、新規症例のリクルートに関しては、京都大学医学部附属病院における小児脳腫瘍の新規症例は1年間に15~20名見込まれたため、2019年度(採択決定後:10月~3月)には約7~10名の症例登録を見込んでいた。その一方で、2019年度に京都大学医学部附属病院小児科および脳神経外科に入院した新規の小児脳腫瘍患者数は予測よりも少なく、さらに入院時には生命予後が優先され、治療開始前評価が実施できない症例も経験した。その結果、2019年度終了時点で同意が得られたのは3名であった。 次にデータ収集に関しては、2年間の研究期間内には、「治療開始前評価(ベースライン)」「6ヶ月後評価」「1年後評価(治療終了後18ヶ月後評価)」の3時点での精神・認知機能、協調運動および家庭・学校生活における適応行動を評価する計画であった。「治療開始前評価」に関しては、同意が得られた3名の症例については、認知機能および協調運動の評価を行ったが、急性期の症例は易疲労が強く、機器の装着などに時間を要する動作エントリーパッケージを用いた協調運動の質的評価は困難であった。また、「6ヶ月評価」「1年後評価」に関しては、治療開始後6ケ月以上経過した症例がおらず、該当する症例がいなかったため、実施していない。
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今後の研究の推進方策 |
現在、COVID-19感染症拡大のため、京都大学医学部附属病院での新規入院患者の制限および外来作業療法中止となっている。そのため、新規症例のリクルートおよびデータ収集が一時中止している状況である。再開可能となり次第、新規症例のリクルートおよびデータ収集を開始する。 2年間の研究期間内には、個別症例に対する復学支援、ケースシリーズ報告と、適応行動評価の結果とその他の調査項目の結果との関連性を回帰分析により検討し、小児脳腫瘍患者の適応行動に影響する要因の検討を行う予定であった。しかしながら、現在の状況を踏まえると、2年間の研究期間内にリクルート可能な小児脳腫瘍患者は最大で5~10名程度と考えられ、適応行動評価の結果とその他の調査項目の結果との関連性を回帰分析により検討することは難しいと考えられる。そのため、2年間の研究期間内には、新規発症の小児脳腫瘍患者の個別症例に対する復学支援、ケースシリーズ報告を行う。 また、復学後の小児脳腫瘍患者も対象に含めて、精神・認知機能、協調運動および家庭・学校生活における適応行動の評価を行い、適応行動評価の結果とその他の調査項目の結果との関連性を回帰分析により検討する。 さらに、2020年度は資料・情報収集および研究成果発表のため、日本癌治療学会(京都)、日本脳腫瘍学会(広島)、日本高次脳機能障害学会(倉敷)などに参加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、予定していた検査バッテリーや評価用紙などの購入と資料・情報を収集するために、直接経費を主に物品費と旅費として使用した。しかしながら、実支出額の累計額は当該年度の所要額をわずかに下回り、次年度使用額が生じた。 次年度には、精神・認知機能、協調運動、適応行動の評価に用いる評価用紙などを購入するとともに、研究成果発表に向けて、最新の知見や知識の習得に必要ながん関連図書、評価結果の解析、統計処理用のASEBA-PC Software Modules、IBM SPSS 25 Statistics Base 教育機関向け DVD版、IBM SPSS Advanced Statistics 25 教育機関向け DVD版などを購入する。 また、資料・情報収集および研究成果発表のため、日本癌治療学会(京都)、日本脳腫瘍学会(広島)、日本高次脳機能障害学会(倉敷)などに参加する。そのため、これらの学会参加費、交通費、宿泊費、日当、英文校正、学会誌投稿料などとして助成金を使用する。
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