近年、腸内菌叢とヒトの健康との関連について関心が高まっている。成人における腸内菌叢研究では、肥満やメタボリックシンドローム、循環器疾患、がんなどとの関連が示されているが、小児期における腸内菌叢については未解明な部分が多い。また、出生後に腸内に定着する微生物の構成は、分娩様式、栄養方法、その後の生活習慣、投薬状況など様々な因子の影響を受けると考えられているが、その決定因子は完全には明らかではなく、複数の因子が複雑に関わりあいながら菌叢構成が決定されると考えられる。小児期における腸内菌叢構成が、その後の成人期以降の疾患や健康状況に関与するとの報告もあることから、本邦における子どもの腸内菌叢を明らかにし、その決定因子を解明することは、ヒトの健康増進および疾病予防のために必要不可欠である。そこで本研究では、「子どもの腸内菌叢構成の実態把握」および「子どもの腸内菌叢構成に影響を与える外部因子の解明」の2点を目的に実施した。このことは、小児期以降の多様な健康・疾患と腸内菌叢との関連を解明するさらなる研究へ発展可能であり、将来的には、腸内菌叢を介した健康増進や疾患予防方法の確立への貢献が期待できるものである。 本研究は、環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」における愛知ユニットセンターの追加調査として実施した。本研究を行うにあたり、大規模な疫学調査において実施可能な検体(糞便)回収および保存方法について検討を行った。これに基づき、対面調査である「学童期検査(小学2年)」に参加した児童を対象に腸内菌叢解析を行い、その構成を分析した。さらに、質問票調査で得られた食事、疾患、服薬、睡眠、運動習慣等の要因と併せて解析を行い、菌叢構成に影響を与えうる因子の検討を行った。
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