本研究プロジェクトは,大学男子水球選手を対象に,上級者の特徴から巻き足(立ち泳ぎ)における推進力向上のための指導観点を導き出すことを目的とした.2021年度は前年度実施し切れなかったデータの収集・分析(圧力分布分析,動作分析),およびその成果発表を行った.新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究実施形態の変更が余儀なくされ,申請時に想定していた対象者数での実験を行うことはできなかったが,分析上必要なサンプル数は確保することができた. 分析の結果,巻き足中の推進力増大の要因となる足底・足背間の圧力差は,足底側の圧力増加ではなく,足背側の圧力低下(すなわち,負圧)に起因して生じていることが明らかとなった.この圧力差は,特に第1趾周辺のエリアで大きかった(>第3趾,踵,第5趾周辺のエリア).また,選手の巻き足を技術的に識別(グルーピング)する変数として,体重で規格化した平均推進力が最も重要であることが明らかとなった.そして,平均推進力が優れた選手は,合力,足部周りの圧力,迎角に関する変数においても良好な結果を示した. 以上のことから,優れた巻き足技術を有する水球選手は,推進動作局面(アウトキック局面からインキック局面の前半)において,足部の迎角を巧みにコントロールしながら,水を第1趾側の側面から流入させることで大きな圧力差を生み出し,それによって推進している可能性が示唆された.より良い推進(推進力向上)のための指導観点としては,推進動作局面中の迎角および流入角の改善と,それに繋がる足関節,股関節の柔軟性向上が挙げられる.
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