厳しい競技環境でプレーするアスリートのメンタルヘルスを良好に保つためには、ストレスに対して柔軟に対処・対応していくことが求められる。しかしながら、傷つきやすいアスリートほどストレスの対処・対応は困難であることが予想される。そこで本研究課題では、傷つきやすさ(ヴァルネラビリティ)に着目し、アスリートを対象としたメンタルヘルスに関する研究を実施した。研究課題は大きく3つに分類し、①ヴァルネラビリティと性格特性との関連、②ヴァルネラビリティとストレスコーピングとの関連、③ヴァルネラビリティとメンタルヘルスとの関連。についてそれぞれ進めた。なお、2021年度は③に着目して研究を実施した。 ③ヴァルネラビリティとメンタルヘルスとの関連では、精神的健康と抑うつ症状の概念を用いて関連性や影響について検討をした。2019~2020年度は抑うつ症状との関連・影響を検討し、2020~2021年度は精神的健康との関連について分析手法を工夫し、新たな研究成果を蓄積した。実績の概要としては、傷つきやすさの得点が高い者と低い者に分類し、男女別に精神的健康への影響を確認したところ、傷つきやすさの得点が高い女性は最も精神的健康の得点が高く(高いほど不良)、傷つきやすさの得点が低い男性は最も精神的健康の得点が低い(低いほど良好)ことが明らかとなった。さらに抑うつ症状と同様に、傷つきやすい者は傷つきにくい者と比べて、約2.1倍も精神的健康度が不良になることが示された。これらのことから、傷つきやすい者ほどメンタルヘルスが不良になりやすいことが明らかとなり、メンタルヘルスを良好に保つためのアプローチが重要であることが示唆された。
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