• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

ゲーミフィケーションを用いたジョブ・クラフティング促進介入の心の健康への効果検討

研究課題

研究課題/領域番号 19K24292
研究機関東京女子医科大学

研究代表者

櫻谷 あすか  東京女子医科大学, 医学部, 助教 (70845461)

研究期間 (年度) 2019-08-30 – 2021-03-31
キーワードジョブ・クラフティング / 労働者 / メンタルヘルス / ワーク・エンゲイジメント / 心理的ストレス反応
研究実績の概要

本研究ではゲーミフィケーションを用いたジョブ・クラフティング(労働者が自らの仕事のやりがいを高めるために自主的な働き方をすること:以下JC)促進プログラムを開発し、その効果検討をすることを目的とした。研究実績として、カードゲームを用いて、参加者が能動的にJCを学び、実践するためのプログラムを開発した。続いて、本プログラムの心の健康増進への効果を検討するために、労働者に対する無作為化比較試験の準備および開始をした。
初めに、研究代表者らが既に開発したカードゲームを用いて、集合研修プログラムを作成した。本カードゲームでは、仕事で行き詰まった状況が設定され、その状況を上手く対処するための自主的な働き方(JC)カードを参加者が選ぶ設定になっている。この過程で、参加は自分にとって必要なJCを取捨選択する方法を知り、日常生活でもJCを実践しやすくなる。本研修内で、参加者はJCの講義を受けた後、カードゲームを通した体験型ワークにより、JCを学ぶことができる。最後には、日々の業務の振り返り、JCの計画立案をすることで、研修後もJCを実践できるような内容となった。研究代表者は、プログラム開発にあたり、産業精神保健の専門家から意見をもらいながら集合研修の内容を作成し、数名の労働者から意見を収集しながら修正を行った。
続いて、労働者を対象とした無作為化比較試験による、本プログラムの効果検討を開始した。日本の企業を対象に、研究参加の協力を依頼し、2019年度は2社の企業から承諾を得て、研究を開始した。研究参加者を無作為に、対照群と介入群に割りつけ、介入群には開発したプログラムを提供した。効果指標は自記式質問票により1)ワーク・エンゲイジメント、2)心理的ストレス反応、3)JC得点等を測定した。2020年度は引き続き、参加者を募集し、効果測定を実施し、本プログラムの効果を検証する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までの進捗状況としては、当初の計画通り、カードゲームを用いたジョブ・クラフティング(以下JC)プログラム開発を終え、無作為比較試験による本プログラムの効果検討を開始した段階である。
プログラム開発にあたり、研究代表者は産業精神保健の専門家やゲーミフィケーションの専門家から意見をもらいながら研修内容を作成した。開発したプログラムは、研究代表者らが既に開発していたカードゲームを用いた集合研修形式となった。JCの理論に基づきながら、参加者が体験型でJCを学ぶことができるワークによって構成される。集合研修内容を作成した後、数名の労働者から意見を収集しながら、労働者の理解度や満足度の向上を目指して、内容を修正した。最終的に参加者が実践的にJCを学ぶことが出来る集合研修プログラム(1回120分)が完成した。
続いて、本プログラムの効果を検討するため、無作為化比較試験の準備をした。はじめに、日本の企業を対象に研究概要の説明および参加協力の依頼をし、2社の企業から承諾を得た。それぞれの企業の従業員に対して、研修参加者を募り、研究参加に同意し事前調査に回答した労働者を、無作為に対照群と介入群に割りつけ、介入群には開発したプログラムを提供した。プログラムは、研究代表者と数名のファシリテーターにより提供された。プログラム提供にあたり、研究代表者が4名のファシリテーター(臨床心理士2名を含む)に、本研修マニュアルを渡してトレーニングを実施し、全参加者に対する介入プログラムの質を担保した。効果指標は、全参加者を対象に自記式質問票を用いて、介入前、介入直後、および介入1か月後の全3回測定された。測定項目は、1)ワーク・エンゲイジメント、2)心理的ストレス反応、3)JC得点等を用いた。2020年度は引き続き、日本の労働者を対象に効果検討を続ける予定である。

今後の研究の推進方策

今後は2019年度に引き続き、開発したジョブ・クラフティング(以下JC)促進プログラムの無作為化比較試験を続け、本プログラムが労働者の心の健康増進に効果があるかを検討する予定である。本研究計画では、最終的に労働者300名を無作為に2群(介入群・対照群)に割り付け、効果を検証する必要があるので、研究参加者人数300名を目指してより多くの日本の企業に参加の募集をし、無作為化比較試験を実施する。介入プログラムの提供の仕方は、これまでと同様に、主に研究代表者が集合研修を実施する。集合研修では、数名のファシリテーターが参加者のサポートを行い、全参加者に対する介入プログラムの質を担保する。研究代表者は、介入前にファシリテーターに対して、研修実施マニュアルを渡してトレーニングを行う。効果測定も昨年度と同様に、全参加者を対象にWeb式の自記式質問票を用いて、介入前、介入直後、および介入1か月後の全3回測定する。測定項目は、1)ワーク・エンゲイジメント、2)心理的ストレス反応、3)JC得点等を用いる。効果分析としては、本プログラム前後の、対照群に対する介入群の効果指標の差異を検証する。具体的な方法としては、全効果指標を従属変数とし、群(介入・対照) × 時期(介入前・介入直後・介入3ヶ月後・介入6ヶ月後)の交互作用を混合効果モデルにより解析する。また、全効果測定を終了した後には、倫理的配慮として対照群に対して同様の介入プログラムを提供する。
本プログラム効果検討の結果は、国内学会で発表し、および英語論文としてまとめて、海外雑誌に投稿する予定である。また、開発した介入プログラムをより多くの一般労働者に提供できるよう、企業の産業保健スタッフ向けのプログラム実施マニュアルを作成し、書籍としてまとめることも予定している。

次年度使用額が生じた理由

2019年度は、主に介入プログラムの開発やプログラム効果検討の実施準備(研究参加者の募集やプログラム提供の準備等)に主に時間を要し、プログラムの効果検討の主な実施は次年度になったため、次年度使用額が生じた。次年度は、2019年度に引き続き、労働者を対象にプログラムの効果検討を実施し、本プログラムの労働者の心の健康増進効果を科学的に検討する。多くの労働者を対象に介入プログラムを実施するために、研修実施のためのファシリテーターに対する人件費や物品購入費(研修資料の印刷用のコピー用紙やトナー費用)、および交通費(介入プログラム実施にあたり国内の企業を訪問するため)などが発生する予定である。加えて、効果検討の解析に関しても、得られたデータを整理するリサーチアシスタントに対する人件費や統計解析ソフトおよびPCの購入が必要となる。最後に、得られた結果を発表するための国内学会旅費、および論文掲載費用(掲載費用と英文校正費用等)も要する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Effects of a Job Crafting Intervention Program on Work Engagement Among Japanese Employees: A Randomized Controlled Trial2020

    • 著者名/発表者名
      Sakuraya Asuka、Shimazu Akihito、Imamura Kotaro、Kawakami Norito
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychology

      巻: 11 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fpsyg.2020.00235

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 健康経営アウトカムとそのリスク要因に関する文献レビュー2019

    • 著者名/発表者名
      櫻谷あすか, 今村幸太郎, 渡辺和広, 澤田宇多子, 駒瀬優, 小松周子, 杉野敦, 日高結衣, 岡田順二, 八木一弘, 正木宏明, 牧田広志, 川上憲人
    • 雑誌名

      産業医学ジャーナル

      巻: 42 ページ: 62-68

    • 査読あり
  • [学会発表] 日本人労働者を対象としたジョブ・クラフティング介入プログラムのワーク・エンゲイジメントに対する効果:無作為化比較試験2019

    • 著者名/発表者名
      櫻谷あすか、島津明人、今村幸太郎、川上憲人
    • 学会等名
      第92回日本産業衛生学会
  • [学会発表] 労働者の主観的ウェルビーング(subjective wellbeing)向上のための無作為化比較試験の系統的レビュー2019

    • 著者名/発表者名
      櫻谷あすか、堤明純、島津明人、川上憲人、TOMH-Rシステマティックレビューチーム
    • 学会等名
      第78回日本公衆衛生学会総会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi