研究実績の概要 |
前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament; ACL)損傷において膝関節の解剖学的構造は危険因子とされている。特に脛骨後方傾斜角度はACL損傷の受傷メカニズムと関連すると考えられおり、屍体膝を用いた研究において、脛骨後方傾斜の存在がACLを断裂させる運動を生じさせることが明らかになっているが、生体の膝関節バイオメカニクスとの関連は不明である。本研究の目的は脛骨高原に存在する脛骨後方傾斜角度が膝関節バイオメカニクスに及ぼす影響を検証し、ACL損傷の発症リスクを予測するための基礎的データの一端を担うことができるようになることである。 2019年度に第1研究として、膝関節MRI画像の撮像を31名62脚(男性15名、女性16名)に実施した。計測した膝関節のMRI画像より画像解析ソフトウェアを用いて脛骨後方傾斜角度の計測を実施した。また第2研究として、片脚着地動作時の三次元動作の計測を一部実施した。本研究の動作計測に用いたPoint Cluster法を応用した研究結果は海外誌へ掲載された(Endo et al.,Medicina. 2020)。 2020年度では第1研究として実施した脛骨後方傾斜角度をまとめたデータが海外誌へ掲載された(Endo et al., Asia Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy,Rehabilitation and Technology.2021)。 2021年度はCOVID-19パンデミックの影響により解析環境を利用できなかったことが起因し、解析の進捗に遅れが生じ、研究期間の延期措置を受けた。2021年度は第2研究の脛骨後方傾斜角度と膝関節回旋運動の関係について追加解析を実施し、国内学会にて研究成果を公表した(遠藤 他, 第8回日本スポーツ理学療法学会学術大会. 2021)。
|