研究課題
2019年度は本課題の治療戦略における基礎データ確立に主眼を置き,がん患者の筋機能に影響する因子の検討,がん患者に対する運動療法の効果を文献研究によって進めた.がん患者の筋機能に影響する因子に関しては,食道がん術前患者でも施行される化学療法中のがん患者に着目し,多変量解析を用いて筋量,筋力といった筋機能に影響する因子を検討した.対象は化学療法目的に入院した89名のがん患者であり,リハビリテーション開始時に筋機能,身体活動量,栄養,身体・精神症状を評価した.その結果,身体活動量と栄養が筋機能に影響する因子として抽出され,本課題の治療戦略である運動療法と栄養療法の重要性を示唆する成果を得た.なお,この成果は欧文論文として発表している.次に,臨床研究を進めるにあたり,治療戦略の一つである運動療法の効果に関する文献研究を進めた.具体的にはがん患者に対する運動療法が,本研究の副次評価項目であるQuality of life(QOL)に影響するかを検証した.QOLはがん領域で広く用いられるEuropean Organization for Research and Treatment of Cancer QLQ C-30,運動療法は有酸素運動およびレジスタンストレーニングとし,データベースを用いて網羅的に検索した.その結果,18編のランダム化比較試験が抽出され,運動療法はQOLを改善することが明らかとなった.この成果については,現在論文投稿中である.これは研究計画には含まれていなかったが,本課題の今後の展開に寄与する内容であると考えている.
3: やや遅れている
2019年度は治療戦略における基礎データ確立の段階であり,その目的はおおむね達成されたと思われる.一方,栄養戦略に関する検討は栄養剤の選定などに時間を要しており,着手できていない.
2020年度は食道がん患者における筋機能に影響する因子を抽出した後,運動療法と栄養療法の効果検証を進めるべく,データ収集を進めていく予定である。また,研究が順調に進捗しなかった際の代替策として,臨床的に栄養剤が投与されている症例を抽出し,その効果を後ろ向きに検討することも考慮している.
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