研究実績の概要 |
申請者らのグループは、様々な細胞におけるFABP分子の発現およびその機能解析を行ってきた。その一つとして、樹状細胞 (cDC)に発現するFABP5によるMAPKを介した炎症性サイトカインの産生制御を報告した (BBRC, 345 (1), 459-66)。 今回、申請者は、樹状細胞サブセットの一つである形質細胞様樹状細胞 (pDC)が、cDCと同程度のFABP5を発現することを見出した。FABP5欠損マウスにおける脾臓やリンパ節中のpDCの割合や絶対数においては野生型マウスとの間に有意な差は認められず、正常に分布していた。しかしながら骨髄前駆細胞からのpDCの分化誘導実験では、分化誘導初期においてはFABP5欠損細胞のpDCへの分化効率が高かった一方で、分化誘導後期には野生型と比較して、FABP5欠損細胞の分化効率が低下することが明らかとなった。 さらに、定常状態におけるToll-like receptor 7(TLR7)およびTLR9の発現レベルは、野生型およびFABP5欠損pDC間で有意な差は認められなかったが、これらのリガンドであるR848およびCpG-DNAの刺激に対して、FABP5欠損pDCはIL-6やI型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)などの炎症関連遺伝子を過剰に発現することを明らかにした。一方で、pDCが産生することができる免疫抑制性のIL-10やTGF-βなどの遺伝子発現については有意な差が認められず、FABP5がpDCにおける炎症制御のバランスを担っている可能性が示唆される。
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