超高齢化社会を迎えた本邦では認知症予防は喫緊の課題である。本研究では、一夫一婦制を呈するプレリーハタネズミのアルツハイマー病(AD)モデルを作製・解析することで婚姻関係が認知障害に及ぼす影響とその神経機構を明らかにする。まず、健常なプレリーハタネズミのバーンズ迷路、novel object recognition testの行動学的性状を取得する。次いで、streptozotocin(STZ)脳室内投与によるADモデルを作製し、上記迷路試験と組織学的・生化学的解析によりADモデルとしての妥当性を検証する。最後に一夫一婦を形成させた個体を用いて、STZ投与ADモデルの病態に対する一夫一婦形成の影響を行動学的・組織学的に明らかにする。 (1)マウスやラットとは異なる行動学的性状を示すプレリーハタネズミのバーンズ迷路およびnovel object recognition testを行って、プレリーハタネズミの空間学習・物体認知における基盤情報を得た。(2)プレリーハタネズミの脳室内にstreptozotosinあるいはヒトamyloid betaを投与することで、ADモデルを作製し、その妥当性を検討した。 (1)プレリーハタネズミの物体認知・空間認知の特性について、pair bondの有無に主効果は認められなかったが、プレリーハタネズミではpair bondすると物体認知や空間学習能力が向上することが示唆された。(2)ADモデルマウスの作製について、STZやamyloid beta1-42を投与した個体において、コントロール群と比較して、優位な潜時の遅延は認められなかった。今後は、脳組織の炎症像を解析することによって神経細胞死などの影響の有無を検討する予定である。さらに投与物質の濃度等を検討することにより、プレーリーハタネズミのADモデルの作製を目指す。
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