昨年度までに、トレーニング休止期間中のBCAA摂取により、①骨格筋ミトコンドリア量の減少が抑制されること、②ミトコンドリアの生合成には影響を与えないものの、分裂・分解に関与するタンパク質を減少させること、③ミトコンドリアの質的な変化は起こらないことを明らかにした。これらの結果から、BCAAの摂取はミトコンドリアの分裂・分解といった除去機構を一部抑制することで、トレーニング休止に伴うミトコンドリア量の減少を抑制する可能性が示唆された。 ミトコンドリア量が増加することで、同一運動強度における脂質利用の亢進や糖質利用の減少が起こることが知られており、これらの適応は持久的運動パフォーマンスを規定する一つの因子になる。そこで今年度は、トレーニング休止期間中のBCAA摂取が、その後に運動を行った際のエネルギー基質利用に与える影響について検討した。 雄性のICRマウス6週齢を用い、4週間の持久的トレーニング(20-30 m/分、60分、5回/週)を行わせた後に2週間のトレーニング休止期間を設けた。トレーニング休止期間中に水またはBCAA(0.6 mg/g 体重、2回/日)を経口投与にて与えた。最終投与から24時間後に25 m/分で60分間の走行テストを行わせ、直後に骨格筋を摘出した。その結果、トレーニングを行った群と比較して、トレーニング休止期間を設けることで、走行テスト後の腓腹筋および前脛骨筋のグリコーゲン量が低値を示した。しかし、トレーニング休止期間中にBCAAを摂取した群では差が見られなかった。以上の結果から、トレーニング休止期間中のBCAA摂取は、その後に運動を行った際の筋グリコーゲン利用を減少させる可能性が示唆された。
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