研究課題
今回の研究期間を通して、遠隔虚血プレコンディショニング(Remote limb ischemic conditioning: RIPC)による脳梗塞に対する神経保護効果と運動感覚機能障害軽減効果について行動学的、免疫組織学的に調べた。SDラット8匹を使用して、無作為に4匹ずつRIPC群とNo-RIPC群に分けて検討を行った。RIPCは、無麻酔下で尾に血圧測定用のカフを巻き180mmHg~200mmHgの圧で駆血5分、開放10分を1セットとして3回繰り返した。RIPC群は、7日間の介入を行い、その間、No-RIPC群は自由飼育として介入終了後に脳梗塞を作成した。脳梗塞作成2日後に、神経学的評価や運動感覚機能評価を行って屠殺した。屠殺後に、TTC染色を行い脳梗塞体積の測定を行った。脳梗塞発症前のRIPCを行うことによってNo-RIPC群と比べて脳梗塞体積の有意な縮小がみられた。さらに、神経麻痺や運動感覚機能障害の有意な軽減も認められた。RIPCによる脳梗塞体積の縮小効果が確認されたが、そのメカニズムとして内在性保護因子である14-3-3γに着目した。RPICを行うことによって脳梗塞発症後にペナンブラ(梗塞周囲巣領域)における14-3-3γの発現量増加が確認された。神経細胞死に深く関与しているアポトーシスの変化を確認した結果、アポトーシス促進因子であるBaxやアポトーシス最終決定因子であるcaspase 3の発現量は、RIPC群で有意に減少していた。このことより、脳梗塞発症前に7日間連続でRIPCを行うことで脳梗塞発症後、脳梗塞体積を縮小し、神経障害や運動感覚機能障害を軽減させる可能性が示唆された。しかし、今回の研究で使用した実験動物の数が少なく、実験動物数を増やして検討を行う必要がある。さらに、RIPCのメカニズムには不明な点が多く、更なる検討が必要である。
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Journal of Neuroinflammation
巻: 17 ページ: 1-12