国立教育政策研究所(2015)は、汎用的な資質・能力の中核が「思考力」であることを報告した。この思考力の要素の一つに批判的思考がある。この思考は「どのような情報を信じ、どのような行為を取るかを決めるために、きちんと(合理的に)じっくり(反省的に)考える」ことと報告した(国立教育政策研究所、2013)。平山・楠見(2004)は「客観的にものごとをとらえ、多面的・多角的に検討し、適切な基準に基づき判断しようとする思考」と定義し、Ennis(1987)は、「何を信じ、何を行うかのための合理的で省察的な思考」と定義した。このようにその捉え方は一つではないが、物事を慎重に客観的に省察的にとらえる態度面と、それを論理的に考える能力面の二つの面があることが、報告されている。しかしながら、このような批判的思考の育成に関し、効果を発揮する指導モデルは、開発されてない。また、近年ICTを利用した取り組みや報告が多くみられる。ICTを活用することで、子供同士が意見交換や発表を行うなど、協働的な学びなどの指導方法を通し、思考力等を育成することが目指されていた。そこで、まず、批判的態度の尺度を検討し、次にタブレットPCを組み合わせた指導モデルを開発し、その効果を検証することを目的とした。その結果、次のようなことが明らかとなった。第1に、体育授業に批判的思考態度尺度を検討した結果、「多面的・論理的思考」の第1因子、「内省的思考」の第2因子、「客観的思考」の第3因子から成る12項目3因子構造が明らかとなった。第2に、批判的思考態度を獲得できる指導モデルを開発し、小学校6年生の児童を対象に6時間単元の走り高跳びの授業を実践した。そして、単元前及び単元後に批判的思考態度尺度の調査を行い、比較検討した。その結果、全ての因子得点及び総合得点において、単元前に比べ単元後で有意に高値を示した。
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