研究課題
身体の垂直性を判断する能力(主観的身体垂直認知:SPV)に対し、後頚部への振動刺激がいかなる影響をおよぼすかを検証した。対象者は健常成人24例、脳卒中例11例とし、振動刺激側は健常者では左右に無作為に振り分け、脳卒中例では麻痺側とした。刺激条件は、振動周波数80Hz、刺激時間10分とした。SPVの測定には、電気垂直測定機器(Electrical Vertical Board; EVB)を使用し、測定条件は足底非接地、腕組みの姿勢とした。検者は、EVBを15°または 20°の位置から1.5°/ sの速さで前額面上で座面を動かし、対象者の身体が垂直と感じた時点での座面の角度をデジタル角度計から測定した。 SPVの計測は、開始位置(左右)と角度(15°・20°)がPseudorandomになるように、1セッションに計8回実施した。角度は、垂直位を0°、右側(非麻痺側)への傾きをプラス、左側(麻痺側)への傾きをマイナスの値と定義し、 1セッション8試行の平均(傾斜方向性)と標準偏差(動揺性)を算出した。SPVは振動刺激前・刺激中・刺激後の3セッション(計24回)測定した。その結果、健常者では傾斜方向性は振動刺激によって影響をうけないのに対し、動揺性は振動刺激によって減少し、刺激側による相違は少ないことが示唆された。後頚部への振動刺激は、身体を定位するうえで複数の感覚運動情報を統合する重要な役割をもち、姿勢に影響をおよぼすことが示されており、頚部に対する固有受容刺激が身体知覚を鋭敏にさせた可能性が考えられた。現在、脳卒中例における後頚部振動刺激の効果を検証しており、データ集積後に脳卒中例における頚部振動刺激の影響と、健常者との特性の差異を解析・公表する予定である。
3: やや遅れている
2020年3月までに健常成人に対する後頚部振動刺激による身体垂直性への影響についてデータ収集は終えたが、2021年度に健常者のコントロール群(振動刺激なし群)のデータ収集を追加した。2021年度3月時点において、COVID-19の影響にて脳卒中患者のデータは11例に留まっており、引き続きデータ集積に努める。
引き続き、脳卒中患者の身体垂直性に対する後頚部振動刺激の影響を調査し、データ集積後に脳卒中例における頚部振動刺激の影響と、健常者との特性の差異を解析・公表していく。
2021年度に健常者のコントロール群(振動刺激なし群)のデータ収集を追加する必要があったが、COVID-19の影響から協力施設でのデータ収集が困難となり、研究代表者所属施設でデータ収集する目的で電気垂直測定機器を購入したため。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
J Stroke Cerebrovasc Dis
巻: 9 ページ: 1-8
巻: 1 ページ: 1-7