研究実績の概要 |
近年、ダイゼイン代謝産物のエクオールによる骨粗鬆症予防効果が明らかになっている。エクオールには鏡像異性体が存在するが、S体及びR体の骨疾患に対する有効性や作用機序、安全性について比較検討を行った研究はない。そこで本研究では、エクオール鏡像異性体が骨代謝に及ぼす影響と詳細な分子メカニズム、生体内での効果を比較することを目的とした。初年度の本年は、メカニズム解析のため培養細胞を用いた実験を行った。 はじめに、マウス骨髄細胞、マウスマクロファージ細胞RAW 264を活性型ビタミンD3またはRANKL刺激により破骨細胞に分化させ、(S)-エクオール及び(R)-エクオールを同時に添加した。分化に対する影響を酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ染色にて検討した結果、エクオール鏡像異性体により破骨細胞数は減少し、特にS体で強い抑制作用を示した。また破骨細胞分化関連因子 (TRAP, Ctsk, NFATc1, OSCAR, DC-STAMP, OC-STAMP) のmRNA発現量もエクオール鏡像異性体により抑制され、OC-STAMPはR体と比較してS体で強い発現抑制がみられた。骨吸収シグナル伝達経路 (JNK 1/2, IKK, NF-κB) に対する影響をwestern blot法にて検討した結果、エクオール鏡像異性体による破骨細胞分化制御には、MAPK/NF-κB経路の抑制が関与している可能性が示された。さらにエストロゲン受容体の阻害剤を用いて詳細なメカニズム検討を行った。 続いて、マウス骨芽細胞前駆細胞MC3T3-E1を骨芽細胞に分化させ、(S)-エクオール及び(R)-エクオールを同時に添加した。アリザリンレッド染色を行った結果、(S)-エクオールにより骨芽細胞への分化が亢進した。一方、骨形成マーカーであるアルカリホスファターゼ活性に対する影響は認められなかった。
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