研究課題/領域番号 |
19K24323
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
小谷 鷹哉 日本体育大学, 体育学部, 助教 (60849727)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 骨格筋萎縮 / 廃用筋萎縮 / リボソーム |
研究実績の概要 |
骨格筋量の保持・増進が健康維持には重要となる。一方で、骨格筋は非常に可塑性が高く、怪我や長期臨床などにより骨格筋の活動量が低下すると、骨格筋は萎縮する(廃用性筋萎縮)。そのため、効果的な廃用性筋萎縮方法の開発が必要であり、そのためには筋萎縮メカニズムの詳細な解明が必要となる。そこで、本研究では、活動制限に伴う骨格筋量を正に制御する筋タンパク質合成の低下に焦点を当て、タンパク質合成装置であるリボソーム量の減少に着目し、リボソーム量の減少のメカニズムの解明およびリボソーム量の減少が廃用性筋萎縮に及ぼす影響を検証する。これまでの研究では、活動制限によりリボソーム合成が低下することが明らかとなっているため、本研究では、リボソーム分解系、特にリボソーム選択的オートファジーに着目する。 2019年度は、マウスの骨格筋を対象に①絶食によりリボソーム量が減少する条件における、リボソーム選択的オートファジー関連タンパク質発現の変化②骨格筋の活動制限に伴う骨格筋萎縮モデルにおける、リボソーム選択的オートファジー関連タンパク質発現の変化を検討した。①マウスを対象に絶食を行ったところ、骨格筋のリボソーム量は時間依存的に減少した。さらに、リボソーム選択的オートファジー関連タンパク質のmRNAの発現量についても、時間依存的に増加した。②骨格筋の活動量制限については、マウスの下肢ギプス固定および坐骨神経切除を採用した。両モデルにおいて、骨格筋萎縮および骨格筋のリボソーム量の減少が観察された(vs 通常飼育群)。さらに、リボソーム選択的オートファジー関連タンパク質のmRNAの発現の亢進が観察された(vs 通常飼育群)。これらの結果より、活動制限にともなうリボソーム量の減少には、リボソーム合成の低下だけではなく、リボソーム分解も関係している可能性が新たに示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、活動制限に伴う骨格筋の廃用性萎縮のさらなるメカニズム解明を目指して、マウス生体の骨格筋を対象に、リボソーム量が減少する条件においてリボソーム選択的オートファジー関連タンパク質の発現が亢進するのかを検証した。その結果、絶食および廃用性筋萎縮モデル(ギプス固定・除神経)において、骨格筋量およびリボソーム量の減少に伴ってリボソーム選択的オートファジー関連タンパク質の発現が亢進することを確認した。そのため、リボソーム量が減少する条件において、リボソーム合成の低下に加えてリボソーム分解が亢進している可能性が新たに示唆された。また、ウェスタンブロット法によるタンパク質レベルでの解析についても、条件検討を優先したため全ての検討で解析を終えることはできなかったが、適切な条件を見出すことができたため、今後の解析はスムーズに進む予定である。したがって、大きな遅れは生じておらず、結果を得られていることから本研究は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに残っている解析を継続するとともに、活動制限に伴うリボソーム選択的オートファジー関連タンパク質の発現の亢進の抑制がリボソーム量および廃用性筋萎縮に及ぼす影響を検討する。タンパク質の発現抑制については、エレクトロポレーション法による骨格筋へのshRNAベクター(small/short hairpin RNA: 短い干渉ヘアピン。siRNAを供給するためのベクター)の導入により試みる予定である。すでに、エレクトロポレーション法を用いて骨格筋内でGFPタンパク質(青色の光を吸収して緑色の蛍光を発するタンパク質)が発現することは確認できているため、エレクトロポレーション法による骨格筋へのshRNAベクターの導入の手技・手法は習得済みである。計画としては、エレクトロポレーションによる骨格筋へのshRNAベクターの導入し、リボソーム選択的オートファジー関連タンパク質の発現をノックダウンできているか否かをmRNA量およびタンパク質量をRT-qPCRおよびウェスタンブロット法により解析する。その後、確立した遺伝子ノックダウンモデルにギプス固定および除神経を行い、リボソーム量および骨格筋量に及ぼす影響を検討する。これらの検討により、活動制限に伴うリボソーム量の減少が、廃用性筋萎縮の要因となるのかを明らかにし、活動制限に伴う廃用性筋萎縮メカニズムを解明していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子工学の技術を用いた遺伝子導入について、手技的な問題はないが、実験結果に影響が出る可能性が見られたため、異なる方法への切り替えが必要で、次年度へと課題を持ち越すため。
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