動脈圧受容器反射は短期的な血圧変動に対して血圧の恒常性を維持する最も重要な調節機構である。動脈圧受容器反射は大動脈洞および頸動脈洞が動脈の伸展を感知し、その程度に応じて血圧を調節しているため、大動脈や頸動脈といった中心動脈の硬化度(スティフネス)の増加が動脈圧受容器反射の感受性の低下と関連することが報告されている。 レジスタンストレーニング(RT)は日常生活動作(ADL)の改善ひいては健康寿命の延伸に寄与することが期待されており、広く推奨されている。一方、RTは中心動脈スティフネスの増加を引き起こすことが報告されている。したがって、RTに伴う中心動脈スティフネスの増加は動脈圧受容器反射の感受性を鈍化させる可能性があると思われる。 そこで、本研究ではRT鍛錬者と同年代の非鍛錬者の中心動脈特性と動脈圧受容器の感受性を比較し、RTによる中心動脈スティフネスの増加が動脈圧受容器反射の感受性に及ぼす影響を検討することとした。 本研究において、RT鍛錬男性と非鍛錬男性を比較した結果、1)RT鍛錬男性は非鍛錬男性と比較して中心動脈スティフネスが有意に高く、動脈圧受容器反射の感受性が有意に低い、2)動脈圧受容器反射の感受性と中心動脈スティフネスとの間にはそれぞれ有意な負の相関関係が認められた。これらの結果はRTに伴う中心動脈スティフネスの増加が動脈圧受容器反射の感受性を鈍化させることが示唆された。 しかし、本研究は横断研究のみであり因果関係を示すことはできないのが、限界点として挙げられる。本研究計画当初は、トレーニング介入研究を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大により実施が困難であったため断念した。今後、感染状況をみながら開始したいと考えている。
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