研究課題/領域番号 |
19K24333
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
浅原 亮太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (90847584)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | セントラルコマンド / 運動時の循環調節 / 運動イメージ / 巧緻運動 |
研究実績の概要 |
運動時における循環機能の調節メカニズムとして、運動指令と関連して脳高位中枢から下降する見込み的循環指令(セントラルコマンド)がある。セントラルコマンドは心循環系をフィードフォワード的に調節する信号であると定義されているが、その詳細の多くは未解決のままである。令和元年度は、セントラルコマンドの脳内ネットワークを探索するためヒト研究を推進した。 手の巧緻動作時に、運動に必要な酸素を供給するため、セントラルコマンドが筋肉への血流量増加を引き起こすかどうかを検証した。手の巧緻動作時には、脳の運動関連領域から特に前腕および手指の筋肉に対して運動指令が動員されると考えられている。そこでセントラルコマンドは運動指令と並行して脳高位中枢より下降し、前腕筋の血流量を選択的に増加すると仮説をたてた。近赤外分光法(NIRS)を用いて、手の巧緻動作時の前腕筋および上腕筋の酸素化ヘモグロビン動態(Oxy-Hb,血流量の指標)を計測した。 手の巧緻動作時に、前腕筋および上腕筋のOxy-Hbが増加した。このOxy-Hb増加の程度は上腕筋と比べ前腕筋でより大きかった。手の巧緻動作時の前腕筋のOxy-Hb増加は、ムスカリン受容体遮断薬であるアトロピンの静脈内投与により消失したため、Oxy-Hb増加は神経性の血管拡張により生じていることが示された。また実際の運動を伴わない手の巧緻動作の運動イメージも、運動時と同様に前腕筋のOxy-Hb増加を増加させることができた。 以上のことは、手の巧緻動作時にセントラルコマンドは運動指令と関連して前腕筋血管の神経性血管拡張を引き起こすことを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セントラルコマンドの脳内ネットワークを探索するため、機能的核磁気画像共鳴法(fMRI)実験を計画している。半年間で、MRI内でも実施可能な手の巧緻動作を用いた実験を開始し、巧緻動作時にどのような心および骨格筋の循環応答が引き起こされるかが明らかにした。そして巧緻動作時において、特に前腕筋の血流量が増加し、この応答にセントラルコマンドが貢献するという新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、運動時の循環調節を担うセントラルコマンドの脳内ネットワーク解明という当初の研究計画を推進するため、fMRI実験を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内・国際学会への参加費用として計上する予定であったが、学会が中止(誌上開催)となったため。被験者への謝金等に充てる計画である。
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