本研究は、次世代動画像符号化技術に新規機械学習技術を導入することにより、高効率な符号化を達成し、ハードウェア実装時の並列処理困難の問題を解決する。動画像符号化技術は、符号化効率の向上を最優先に開発されてきた結果、符号化ユニット間の依存性が高く、並列処理可能な符号化器のハードウェア実装が実現困難となっている。特に高解像度動画像の符号化を対象とした、専用LSIの設計が難題となっている。先行研究では、機械学習技術を用いた一部の符号化パラメータの最適化が行われたが、処理速度と符号化効率の向上を目的とした本質的な改善を実現していない。これらのことから、本研究では、機械学習の最新研究成果を鑑み、符号化構造を抜本的に改造し、動画像の分析回路と符号化回路が並列処理可能なアーキテクチャを提案する。本提案は、並列処理の実現のみならず、符号化効率の向上とハードウェアの小面積化に貢献可能なアルゴリズムを提案する。 2020年度の研究実績として、動画像の分析回路と符号化回路それぞれのアルゴリズムの検討と実装を行った。動画像分析回路から出力されるパラメータとVVCに導入された新規アルゴリズムの親和性を考慮した動画像符号化回路の設計を行い、国際会議IEEE International Conference on Consumer Electronics 2021にて発表を行った。同時に近年、重要視されているイントラ符号化におけるクロスコンポーネント予測に関する技術提案を行いPicture Coding Symposium Japan 2021で発表を行った。これら2件は映像符号化における中核となる技術を、機械学習を用いることでより効率的な符号化を達成した。そして、これら提案された機械学習の手法を全体アーキテクチャに組み込める仕様の検討を行った。
|