研究課題/領域番号 |
19K24353
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
吉田 雅裕 中央大学, 国際情報学部, 准教授 (60785913)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 自動運転 / ネットワーク制御 / モバイル網 / ハンドオフ / IoT |
研究実績の概要 |
LTEや5Gなどのモバイル網において、ハンドオフの発生時に通信性能が劣化するという課題に対し、複数のモバイル網を合成するというアプローチにより、ハンドオフの発生時の通信性能を向上する通信方式の検討と実験評価を実施した。2019年度は、AndroidのTelephonyManager APIを用いて、ハンドオフの発生タイミング、電波強度、スループット、往復伝送遅延時間(RTT)、パケットロス、端末位置情報(GPS情報)をミリ秒単位で記録することができる計測用アプリを開発した。そして、ハンドオフの発生時の通信性能劣化について、80km/h以上で移動する移動体を用いた実験評価を複数条件下で実施し、ハンドオフが多発する区間での通信性能劣化の特性を明らかにした。また、複数の異なる世代のモバイル網(3GとLTE)や、複数の異なる通信事業者(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)のモバイル網を合成することで、ハンドオフ発生時の通信性能を向上できる可能性があることを実験評価により明らかにした。さらに、ミリ波通信における障害物の位置特定アルゴリズムの初期検討を実施し、特定の領域における点(障害物)の内外判定を高速に行うWinding number algorithmを採用した高速な障害物判定アルゴリズムを実現した。今後、MPTCPなどのトランスポート層の通信プロトコルの改良を行いながら、自動運転車などの高速移動に耐えられるモバイル網のリアルタイム通信プロトコルの実現に向けて、2020年度の研究開発を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、ハンドオフの発生時の通信性能劣化について、様々な条件下で実験を行いながらその特性を明らかにした。さらに、通信性能劣化に対する改善案の策定を行い、2020年度に向けた実装方針を明確にすることができた。今後、Linuxカーネルに実装された通信プロトコルの改良を行いながら、自動運転車などの高速移動に耐えられるモバイル網のリアルタイム通信プロトコルの研究開発を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
異なる世代のモバイル網を複数用いるか、異なる通信事業者のモバイル網を複数用いることで、モバイル網のハンドオフが同時に発生する可能性を非常に小さくすることができることが、2019年度の研究によって明らかとなった。そこで、2020年度は、異なる世代のモバイル網や異なる通信事業者のモバイル網を合成することで、ハンドオフによる通信性能の低下を回避することができ、自動運転車などの高速移動にも耐えられるモバイル網のリアルタイム通信方式の実装を進める。複数の通信網を合成する通信プロトコルとしては、近年のIoT分野で注目を集めているMPTCPの活用が有効であると考える。しかし、Liらの論文(2018)では、既存のMPTCPはモバイル網の通信状況が良い時は通信性能を向上できるが、通信状況が悪い時はTCPよりも通信性能が著しく悪くなるという問題点が指摘されている。そのため、既存のMPTCPを単純に適用するだけでは不十分であり、有線網よりも不安定なモバイル網において通信のリアルタイム性を向上することができるようにMPTCPを改良する必要がある。また、複数のモバイル網を同時に利用する際に、同じパケットを複数のモバイル網に同時に流し続けることは冗長的であり、モバイル網の通信帯域に大きな負荷が発生するため、ハンドオフが高確率で発生する時に限定して冗長パケットを生成する通信方式を検討する必要がある。2020年度はこれらの実装を完了させるべく研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の実支出額に対して100円以下の端数となっており、2019年度内の使用が困難であったため。この次年度使用額については、2020年度の消耗品購入費に充当する予定である。
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