研究課題/領域番号 |
19K24360
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小柴 篤史 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (20845771)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | FPGA / ヘテロジニアスコンピューティング / ユニカーネル / クラウド環境 / OS |
研究実績の概要 |
本研究では、データセンタなどのクラウド環境で導入が進んでいるFPGAの利用効率向上を目的として、複数ユーザ/アプリケーション間でFPGAをより高効率に共有できるFPGAの仮想化基盤を考案・開発する。提案機構では、FPGAを利用するアプリケーションを軽量OS「ユニカーネル」上で稼働することにより、各アプリの要求に適したFPGA資源割り当てを可能にする。提案機構の有用性を明らかにするため、研究期間内に基本機能の設計と、プロトタイプの実装および実FPGAボードを用いた処理性能・電力性能の評価を行うことを目指す。 初年度は、提案機構を実現する基本機能の設計を行ったほか、既存研究のサーベイ、クラウドサーバ環境の構築とプロトタイプ実装の一部を行った。まず、提案機構の設計では、ユニカーネル上で動くアプリケーションが仮想化されたFPGAを透過的に利用するための仮想FPGAライブラリと、ライブラリコールに応じて実際のFPGAボードの回路再構成やI/O制御を行うためのバックエンドドライバの設計と実装方法の検討を行った。次に、既存のFPGA仮想化の研究との比較検討を行い、提案機構が仮想化オーバヘッドおよびセキュリティの点で既存手法よりも優れた手法であることを示した。これらの研究成果は国内研究会および国際会議において発表された。更に、提案機構の実装・評価環境として、高性能FPGAボードとワークステーションで構成されるクラウドFPGAサーバを構築し、提案機構のプロトタイプ実装に着手した。具体的には、オープンソースのユニカーネル (IncludeOS) にFPGA制御APIを実装し、ユニカーネル上のアプリケーションからFPGAボードを制御可能にした。以上の成果により、研究期間内における提案機構の実装と評価の完了に向けて順調に前進していると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、初年度にプロトタイプ実装をARMプロセッサとFPGAで構成される組み込みボード上で行い、次年度にデータセンタ向けFPGAカードを搭載したx86クラウドサーバ環境へプロトタイプを移植する予定であった。しかし、組み込みボード上でプロトタイプ実装に必要なライブラリが一部サポートされていない、プロトタイプ移植がCPUアーキテクチャやFPGAの種類の違いにより難しい等の課題があることが判明し、この方法は実装や動作検証に想定以上に時間を要することが見込まれた。そこで研究計画を変更し、クラウドサーバの環境構築を前倒しして行い、その上で基本システムを直接実装することにした。この計画の変更によって、プロトタイプ実装は当初の予定より遅れたものの、次年度以降に行う予定だったクラウドサーバ環境の構築が既に完了し、またプロトタイプの移植作業が必要なくなったことから、残りの期間における研究目標の達成は可能であると考えている。このことから、当初の計画とは異なるものの、研究は概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、引き続き提案機構のプロトタイプの実装を進め、処理性能や電力性能の評価実験を行う。更に、得られた成果を国内外の学会にて発表する予定である。 実装と評価実験が順調に進んだ場合はFPGAボードをもう1台購入し、複数のFPGAボードがある場合の提案機構の処理性能(スケーラビリティ)についても評価することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
クラウド向けワークステーションおよび高性能FPGAボードを初年度中に購入するための費用として、次年度の研究費の前倒し請求を行ったが、当初の想定より安くこれらの物品を購入することができた。そのため、その余りを次年度使用額として計上した。これは次年度の助成金と合わせて、研究成果発表のための国内外出張や論文出版の費用に充てる予定である。しかし、コロナウィルスの感染拡大の影響により、国内外への出張が困難な場合も考えられる。その場合は助成金を利用してFPGAボードをもう1台購入する予定である。2台のFPGAボードを評価実験に利用することで、提案手法のスケーラビリティを検証することができ、提案手法の有効性をより明らかにできると期待される。
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