小児高難度内視鏡手術は、組織脆弱性、狭小空間での操作といった小児特有の制約や、そもそも内視鏡手術では力触覚を得ることが困難であるなどの理由から、国内に普及することが進まない現状がある。そのため、術前トレーニングの必要性が認識されているものの、小児外科医のための適切なツールがない。そこで、本研究では特に新生児や乳児の内視鏡手術で必要とされる繊細かつ正確な鉗子操作を正確に評価し、効率的なトレーニングを可能とする鉗子先端に発生する力触覚情報を取得できるセンサ付き鉗子を開発する。本デバイスを用いて手技評価やトレーニングにおける妥当性を検証することを目的とする。鉗子開発は、鉗子先端で得た力触覚情報をリアルタイムに解析し、訓練者にフィードバックするシステムの確立まで行う。この鉗子センサが医師の内視鏡手術手技の技量の違いを判別するのに有用か、また本システムは危険な鉗子操作時に医師に正確なフィードバックができているのかを検証する。初年度は、センサ付き鉗子と訓練者にフィードバックするシステムの開発を行った。センサ付き鉗子については、鉗子のシャフトにセンサを取り付けた試作機の開発に取り組んだ。ユーザーインターフェースを意識した操作性の高い鉗子とするため、小型かつ軽量のセンサを選定した。これまでにセンサを細い鉗子のシャフトに取りつけるために工夫を要した。予備実験によりセンサの耐久性に問題が生じたため、新たに試作を行った。また、鉗子先端の力触覚情報を処理し、術者に知らせるシステムを開発するために、取得した情報をリアルタイムに表示・記録できるシステムを開発した。しかし、COVID-19流行のため、部材がすぐに入手できない、学外施設である研究協力者との共同実験が進まない、持針器に対応としたセンサの開発が行えないなど、当初予定していた開発が進まず、センサやシステムの軽微な修正を行うにとどまった。
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