本研究課題は,行列演算機構を有する計算機アーキテクチャを有効的に使用した画像処理高速化手法を学術的に明らかにし,体系化したフレームワークを構築することを目的としている.行列演算機構とは,行列積を高速に実現するGPU等に搭載されているハードウェアアクセラレータである.固定サイズの行列演算を行うことを前提とする行列演算機構における計算機アーキテクチャの観点からの効率的な画像処理への活用方法は未知である.本年度は,行列演算機構の画像処理アルゴリズムへの適用のために,一般的なFIRフィルタリング処理と積分画像生成に関して検討を行った. 一般的なFIRフィルタリングに行列演算機構を活用するためには,アルゴリズムの再定義が必要である.FIRフィルタリングに行列演算を活用した場合,入力は,対象とする画素集合とそれに対応するフィルタリング重みになる.そして,その演算結果はフィルタリング結果の一部分のみが得られる.また,このフィルタリング結果の一部分は,隣の注目画素のフィルタリング結果とも一部が重複する.そのため,行列積和演算後に得られる冗長な演算結果の一部分のベクトルを足し合わせることで,FIRフィルタリングの実現を行うことを検討した.また,積分画像生成の検討では,画像全体を一つの行列と考え,それに対して列方向または行方向の総和を表現する行列との行列積を演算することで実現する方式を検討した.
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