研究課題/領域番号 |
19K24369
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
市川 淳 神奈川大学, 工学部, 助教 (90807942)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 協調 / インタラクション / 行動予測 / 適応 / 他者モデル / 集団運動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,運動協調過程における他者視点の理解,他者の行動予測を検討することである.当該年度は,認知科学を中心に学習科学や生物学,スポーツ科学など,さまざまな分野から協調に関係する先行研究を幅広くレビューした.具体的には,言語情報を用いたインタラクションにおける問題解決や学習に関する研究,非言語情報を用いたインタラクションとして近年,認知科学で盛んに取り組まれている他者の意図を推定する,あるいは行動を予測する認知モデル(他者モデル)の研究,さらには,鳥や魚,スポーツのチームワークといった集団運動自体の特徴やメカニズムを検討した研究を整理した.そして,これらの知見や検討事項を踏まえて,協調に関する発展的な議論に向けて,対象とする集団運動を定量的に分析し,特徴的な集団運動と他者の行動を予測する認知との関連をみる新たなアプローチを提唱した.他者視点の理解の基盤には,他者の行動予測があると考えられる.一連の展望論文は,国内の学術雑誌にて採択が決定された. また,先行研究 (丸野, 1991,発達心理学研究) で提案されたなぞり課題を用いて,3人1組による運動協調に関する実験を行った.ここでは,運動データとして,張力センサから課題の操作に基づく糸の張力を計測した.さらに,3人でインタラクションすることで動かす3本の糸につながれたペンの位置についても動作解析ソフトを利用して動画から記録した.ペンの位置から課題の成果を示すパフォーマンスを分析するだけでなく,張力データからインタラクション自体を定量的に分析し,パフォーマンスとの関連から運動協調において他者の行動予測と適応が鍵であること,他者視点の理解が重要であることを明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の背景を検討するうえで,先行研究を整理し,本研究で適用するアプローチの重要性を説いた取り組みがレビュー論文として採択されたため.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,実験で取得したデータの分析を進める.ペンの位置から試行を通して課題の成果を示すパフォーマンスが向上したかを検討する.さらに,糸の張力の時系列データを分析し,課題の達成において,3人の間でどのような役割の分担や切り替えが行われたかを検討し,パフォーマンスとの関連をみる.そして,得られた成果をまとめて国内や国外の学術大会で報告し,研究者と積極的に議論を行う.最終的には,国外の学術雑誌への投稿を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を進めるにあたって,他大学の研究者との打ち合わせは主に電子メールやビデオ通話を介して行われた.また,当該年度は,先行研究のレビューを中心とする活動を行ったため,実験の結果を学術大会等で報告する機会がなく,旅費の支出が発生しなかった.今後,データの分析を行うにあたって有料の統計ソフトウェアの購入を予定している.また,これまで以上に議論を進めるために学術大会などで積極的に成果を報告する予定である.合わせて,国外の学術雑誌への投稿を目指す.
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