昨年度に牽引力錯覚を利用したハプティックインタフェースの具体的な応用例として,視覚障害者が白杖の操作方法を習得するための訓練システムを開発した.今年度はこのシステムをブラッシュアップし,効果を検証した.具体的には,白杖操作の基本一つであるタッチテクニックを対象とし,適切な振り幅を牽引力錯覚によってフィードバックした.タッチテクニックでは,肩幅よりやや広めの幅で白杖を左右均等に振ることが重要とされている.そこで,目標の振り幅との誤差をモーションキャプチャによって検出し,その誤差に応じて牽引力を制御した.牽引力錯覚を利用して振り幅を誘導する前と後で目標の振り幅との誤差を比較した結果,誤差が有意に低下することが確認された(N=12).つまり,本システムを利用することで特定の振り幅を教示できることが示された. また,牽引力錯覚を利用したハプティックインタフェースを展開していくために,初年度に明らかにした非対称振動刺激の設計論をもとに,錯覚を誘発できるモジュールを開発した.本モジュールでは,スタンドアロンで駆動するものとバッテリと無線で駆動する2種類を実装した.これらのモジュールはボイスコイル型振動子と制御回路で構成されている.スタンドアロン型は簡易的に錯覚を体験することやワークショップでの利用を想定して開発された.無線型は白杖などのデバイスの中に内蔵することを想定して開発された.これらのモジュールによって,牽引力錯覚を利用したハプティックインタフェースのアプリケーション開発の基盤を構築することができた.
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