研究実績の概要 |
市街地や,広面積の私有地等での交通に伴う問題予測には,施設の位置や形状などの構造的特徴,施設の種類やイベントおよび背景などの意味的・社会的特徴,気象や地形などの自然環境的な特徴などを複合的に考慮する必要がある.また,航空路においては洋上気象,制限空域,飛行計画,各国の社会的状況などについても考慮する必要がある.本研究では,交通に関連する様々なデータをナレッジグラフとして統合し,このデータを基に様々な交通問題の予測に流用可能な手法を実現することを目指した.市街地や私有地内では,異なる種類のデータを収集しナレッジグラフとして統合し,グラフ埋め込み手法を適用することで問題を予測した.航空交通においては航空機の運航に係る様々な情報を,システムや運航関係者間で共有することが必要であり,独立したシステムを連携させてシームレスな情報配信を可能にする,航空交通情報共有基盤の導入が検討されている.しかし,情報ごとに異なるモデルが存在し,それらの使用語彙,対象範囲,粒度,設計における視点などが異なるため,異種情報間の横断的な連携と問題予測等へのデータ活用は困難である.そこで,本研究ではオントロジー技術によりシステムの意味的な相互運用性を強化する手法を提案し,オントロジーに基づいてナレッジグラフを蓄積することにより,交通関連の異種データの統合を実現した.特に,異なる情報ごとのドメインオントロジーの構築に加えて,それらの参照オントロジーを上位オントロジーに基づいて構築し,ドメインオントロジーとのマッピングを行った.これにより,モデルとしての拡張性を有することを確認し,今後新たな種類のデータが環境に追加された場合においても流用できる可能性を示した.さらに,ナレッジグラフに基づいて航空路上で発生しうる問題の推論検索を可能にし,構築したオントロジーと情報共有基盤のシステムとしての有用性を示した.
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