従来、生物多様性の広域評価では、生息地の分断化の影響が強調されてきた。しかし近年、分断化としばしば同時に生じる環境汚染源である交通騒音が、動物の行動や群集構造(種数・個体数等)といった生物多様性を左右する要素に影響することが分かってきた。そこで本研究では、生物多様性への騒音の影響が分断化の影響に匹敵するのかを調べ、さらに騒音と分断化の相互影響の有無を理解することを目的とする。そのために、北海道勇払平野の分断化の程度が異なる複数の森林景観で、鳥類群集を対象に騒音の再生実験を行い、鳥類の種数・個体数への騒音と分断化の影響力を比較する。
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の蔓延のため春季に予定していた野外調査を中止した。しかし、9月下旬~11月初旬には予定通り渡り鳥を対象とした野外実験を行った。まず、前年度に選定した勇払原野および北大苫小牧研究林内の10の調査プロットに、スピーカー3台からなる騒音再生システムを設置した。各プロットでは約2か月半にわたり1週間ごとに騒音の再生/停止を繰り返した。そして、週1回のペースで10週間にわたりプロット内の鳥類を数えた。調査終了後にデータを集計し、解析を行ったところ、鳥類の種数・個体数への騒音と分断化の影響は同程度であることが分かった。現在、機能群や各種によって分断化や騒音の影響程度が異なるかどうかに関する詳細な解析を行っている。同時に論文執筆を進めている。すべての結果が出そろい次第、速やかに論文をまとめ国際誌に投稿する。
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