本年度はコロナウィルスの影響で予定していた採泥点数の実施が難しい状況であり、試料採取に大幅な遅れが出た。本年度は感染対策を行ったうえで、船舶での採泥を16地点、2年間で合わせて26点分の採泥を実施した。 本年度は2年間で採泥した東京湾の表層堆積物中の有機物含有量と、間隙水溶存メタンを測定した。ヘドロと呼ばれる東京湾の黒色の表層泥は、どのサイトも数%を超える高い有機物量であり、海底表層部においてもメタン濃度が急激に上昇することが明らかとなった。本年度は当初、学外において予定していた分析は、コロナウィルスの影響で測定に大幅な遅れが出ている。今後、引き続き測定を行う予定である。 2年間の測定結果から、東京湾では、人工の排水の影響を強く受けるサイトでは特に有機物含有量が高く、ヨウ素と親和性の高いメタンの濃度も高い傾向を示した。さらに間隙水中のヨウ素濃度も海水と接している堆積物中の間隙水では海水の数~数十倍と高い濃度を示した。このことから、東京湾内のサイトにおいても、特に人工排水の影響を強く受けるサイトでは、高い有機物含有量を示すだけでなく、有機物との親和性が高いメタンやヨウ素濃度も同様に高い濃度を示すことから、ヘドロがヨウ素やメタンを貯留する効率的な媒体になっていることが示唆される。今後、本年度実施できなかった採泥点において採泥を行い、ヨウ素濃度、珪藻の含有量との比較を行い、ヘドロがヨウ素を濃集させるプロセスやその要因について定量的な評価を行う予定である。
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