研究課題/領域番号 |
19K24385
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
峰島 知芳 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (20550198)
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研究期間 (年度) |
2020-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | 活性汚泥 / 亜硝酸 / HONO / 硝化 / 脱窒 / NO2- / nitrite / 嫌気 |
研究実績の概要 |
気相亜硝酸 (HONO)は大気中でOHの前駆体である為、HONOの挙動を研究することはOHの濃度を推定するのに有用である。HONOの日中における放出源が未解明であり、土壌からのHONO放出である可能性が示唆されている。本研究では、まず、土壌の代わりに菌の集合体である活性汚泥を用いて、好気条件におけるHONO放出と活性汚泥中に存在する化学物質の濃度の関係を調べることを目的として実験を行った。硝化菌・脱窒菌の働きと、化学物質の濃は密接に関連している。HONOの発生量と共に、全炭素濃度(TC)、全窒素濃度(TN)、アンモニウムイオン濃度(NH4+)、亜硝酸イオン濃度(NO2-)、硝酸イオン濃度(NO3-)を計測した。結果、好気条件においてTCとHONO放出が関係することが確認された。活性汚泥への栄養投入から0~3 時間後に最大のHONO放出量である156.4 ng/m2/sが確認されて、この時TCの減少量も最大であり18.7 mg/L減少した。一方でTNはあまり減少せず、HONO放出量との強い関連が見られなかった。活性汚泥中の無機窒素は、NO2-とNH4+の濃度は餌投入後2時間から若干減少することが確認されたが、HONO放出量とは強い相関がみられなかった。NO3-の濃度は正確に測定することができなかったが、NH4+とNO2-の減少分がNO3-に変化することを考えると増加することが推測される。また、HONOの高分解能測定では最初の1時間において最大のHONO放出量である50.4 ng/m2/sが確認され、その後は時間が経つにつれてHONO放出量は少なくなっていった。また、嫌気条件の長さを変化させ、ADAMDを用いてHONO発生量を計測した。今後は、NOやN2Oとの発生のタイミングの比較、アクティブな菌叢を解析することにより、HONO発生のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、産休・育休があり、2022年の12月から職場復帰した。その後、研究室の引っ越しが3月の末にあり、研究室の立下げ、立ち上げ、計測装置の再設置等が合った為、当初よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ADAMDを立ち上げて、HONO発生量を10分間という高時間分解能で測定することに成功した。特に、嫌気条件の培養時間を変化させた時のHONO発生量を高時間分解能で計測た。フィルターパック法とイオンクロマ トグラフィーを用いてADAMDの校正を試みたが、対象としているHONO濃度が大変低濃度であることから、ADAMDの時間分解能ではフィルターパックを用いた校正はできなかった。次のステップとしては、ADAMDの校正を窒素酸化物系とデニューダーを用いて行うことである。来年度は、ADAMDの校正を行い、HONO(測定方法 ADAMD)、 NO(測定方法NOx計)、N2O(測定方法GC-MS)を高時間分解能で計測し、HONO発生のタイミングを明らかにし、HONO発生のメカニズム解明を目指す。 来年度以降は、「HONO発生量の多い条件を検討し、その条件で存在量の多い菌叢をPCR法を用いて解析することにより、活性汚泥からのHONO発生に最も貢献している菌を推測する。 また、酵素の活性を計測することにより、菌の活性を確認し、HONO発生に最も寄与の大きい硝化・脱窒のプロセスを同定する。」PCRの外注をする業者の目途はたった。よって、HONO発生量の多い時間が活性汚泥に養分を与えた直後ということが今年度の計測によって明らかになった為、その時間についてもっとも貢献している菌について調査することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、産休・育児休暇と、研究室の引っ越しの為、研究を行う見通しが立たなかった為、機器の購入等を控えてしまった。また、出張に行くことが出来なかった為、旅費の使用が無かった。しかし、次年度以降は、今年度に控えた機器の購入を行い、研究を進めていく。アルバイトをお願いして、研究をスピード感を持って進めていくことを検討している。
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