研究課題
本研究では、化学物質投与で生じる肝脂肪変性の細胞内イベントをタンパク質の機能的変化に注目し、遺伝子発現から組織変化までのデータを統合的に解析し、シーケンシャルな毒性パスウェイを解明することを目的とした。肝毒性のモデル化合物として四塩化炭素(CCl4)とエチオニン(ET)をWistar-Hanラットに7、14および28日間反復投与し、臓器重量の測定、剖検、血液組織学的検査、オミクス解析を行い、生体レベルで化学物質投与による毒性影響を調べた。その結果、CCl4およびETともに投与日数に応じて有意な体重抑制および肝臓の白色化がみられたものの、投与28日目で肝臓の絶対および相対重量が増加したのはCCl4のみであった。投与28日目の血液生化学的検査では、CCl4およびETともにALP、γ-GT、T-BilおよびTBAの有意な増加がみられたものの、AST、ALT、LDHの有意な増加がみられたのはCCl4のみであった。また、血中の総コレステロール量は投与7~14日まではCCl4およびETともに有意な減少がみられたものの、投与28日目ではET投与群のみで有意な減少が継続した。CCl4およびETともに肝脂肪変性を引き起こすことが報告されているものの、その分子メカニズムや肝臓に与える毒性影響には時間的なものを含めて差がある可能性が示唆された。ユビキチン-プロテアソーム系(UPS)及びERストレス関連遺伝子の発現変化はET投与群で有意に多く、ミトコンドリア機能及び酸化的リン酸化の異常はCCl4投与群でみられた。しかし、脂肪酸のβ酸化やコレステロール代謝の異常はCCl4およびETともに共通性が高かったことから、肝脂肪変性を引き起こす初期の反応は化合物間で差異があるものの、脂肪蓄積に繋がる細胞イベントには共通性が高いことが分かった。
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Current Pharmaceutical Biotechnology
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J Appl Toxicol.
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10.1002/jat.3998. Epub 2020 Jun 28