金属資源の需要増加を受けて将来における資源確保の安定性が懸念されている。資源の安定確保リスクに関する従来の研究では、資源需要の将来変化や一次資源および二次資源中に共存する複数資源の関係性、地域や国に依存する社会経済的要素が十分に考慮されていないという問題がある。本研究では、それらの要素を考慮して将来にわたる金属資源の安定確保リスクの新たな評価・管理手法を開発することを目指す。これにより、より実際の資源供給制約に即した将来における資源の安定確保リスクの評価フレームを構築し、我が国の今後の安定的な資源確保戦略の策定に貢献できると期待される。 一年目では天然鉱山からの一次資源採掘を対象として分析を、二年目では最終製品として使用されて社会中に蓄積する二次資源の分析を中心に進め、本年度では将来の二次資源利用を考慮した一次資源の枯渇性評価手法の開発を行った。世界各国の過去の資源蓄積量の推計結果に基づいて、将来の世界の資源蓄積量および資源需要量、一次および二次資源生産量を将来シナリオ別に推計した。さらにその推計結果と一次資源の枯渇性評価モデルを組み合わせることで、将来需要および二次資源生産量の変化を考慮した新たな一次資源の枯渇性評価モデルを構築し、6金属(アルミニウム、銅、鉄、鉛、ニッケル、亜鉛)を対象に評価係数を算定した。以上の研究成果により、将来の金属資源の安定確保に向けた、動的なリスク分析の枠組みを構築することができた。
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