研究課題/領域番号 |
19K24679
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森田 公一 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (40182240)
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研究分担者 |
長谷部 太 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (20253693)
安田 二朗 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (10282518)
井上 真吾 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (00346925)
櫻井 康晃 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 助教 (00818338)
川口 寧 東京大学, 医科学研究所, 教授 (60292984)
松浦 善治 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (50157252)
押谷 仁 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80419994)
森 康子 神戸大学, 医学研究科, 教授 (50343257)
齋藤 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30345524)
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研究期間 (年度) |
2020-02-20 – 2021-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス / COVID-19 / SARS-CoV-2 / 海外研究拠点 / 迅速診断法 / 蛍光LAMP法 |
研究実績の概要 |
中国、ベトナム、タイ、フィリピン、インドネシア、ミャンマーの各拠点においてCOVID-19流行状況に関する政府などの公式発表、報告書を迅速に分析し拠点間で共有し流行予測の基盤を構築した。また、ベトナム、フィリピンにおいては現地にリアルタイムPCR診断を導入し分子疫学解析を実施する基盤を構築した。さらに、各拠点における患者サンプルの収集を開始し、たとえばベトナムにおいては、新型コロナウイルス感染者や濃厚接触者の咽頭拭い液10,000検体を採取、4月12日までに243名の陽性を確認し、加えて患者、回復者、濃厚接触者等から血清8000検体を採取保存した。加えて、ウイルス分離にも成功し分子疫学解析を実施して論文成果としてEmerging Infectious Diseases誌に受理された。インドネシア拠点では、2020年2月より呼吸器疾患患者からの咽頭拭い液及び喀痰の検査を実施し、3月13日に初めて陽性例を検出し、3月31日時点で2058検体を調べ260検体が陽性であり、感染者166名を確定しサンプルを保存した。ミャンマーではヤンゴンにある国立衛生研究所(NHL)で調査を実施してサンプルの保存をおこなった。 診断薬の開発では蛍光LAMP法を開発し国立感染症研究所の検査により公定法と認定された。現在、長崎県内の離島、基幹病院で臨床応用の実証試験を実施中であり、海外拠点でも実証試験の予定である。また、診断用抗原の開発では、SARS-⊿N抗原をベトナム拠点に輸送し、患者血液中の抗体検出ELISA法にて良好な反応性を確認した。現在患者周辺の血清疫学解析を開始したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3月以降渡航制限措置が取られているため、フィリピン拠点では特に、現地での活動に支障が生じているものの、各拠点では概ね当初計画通り調査やサンプルの確保や技術開発が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ベトナム拠点では当初計画通り研究が進行しており、渡航制限は続いているがベトナム政府がハノイ‐羽田間で定期的にチャーター便を運航しているため、優先的に資材の運搬が可能であり、計画通りに研究を推進する。中国拠点でも渡航制限は継続しているが、引き続き中国国内のCOVID-19流行状況を把握し、中国政府による封じ込め政策の効果を分析し、最新の疫学情報を本研究分担者および日本国内の関連機関と共有する。また、SARS-CoV-2のS遺伝子の変異体情報解析により感染性に影響を与える可能性のある変異を見い出しており、さらにウイルス遺伝子情報の収集・分析を進めていく計画である。タイ拠点ではSARS-CoV-2分離株のS蛋白質を粒子表面に搭載したシュードタイプウイルスを用いて、タイの患者血清中のSARS-CoV-2に対する中和抗体の保有状況を検討する。また、SARS-CoV-2のS蛋白質、M蛋白質、E蛋白質を発現し、SARS-CoV-2のマウスモノクローナル抗体を作製し、SARS-CoV-2のウイルス学的な性状解析を進める。フィリピン拠点については渡航が難しい状況であるため、オンラインによる情報交換を続け、フィリピンにおいて診断された臨床検体から抽出されたRNA、cDNA等を輸送し、日本国内での診断系及び遺伝子検査を進める予定である。インドネシア拠点では引き続き、アイルランガ大学熱帯病研究所新型コロナ検査チームに協力し、東ジャワ州の検査を継続する。被験者の臨床情報や疫学情報を収集し、当州におけるCOVID-19流行の疫学的特徴を明らかにする。ミャンマー拠点では、毎年雨季にインフルエンザが流行するが、2020年度はCOVID-19の流行と重なることが考えられる。従って、計画通り急性上気道炎患者や下痢症患者からのSARS-CoV-2検出と医療従事者におけるCOVID-19血清疫学調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題は、新型コロナウイルス感染症に対応した緊急研究として令和2年2月20日に研究を開始したものである。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響等により、予定していた出張の延期や、研究開始日直後に発注しても3月末までに必要物品の納品が難しいこと等があった。この状況に対応して予算の一部については令和2年度に使用することとし、令和2年度請求額と合わせ、交付決定額全額を研究遂行のために使用予定である。
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