研究課題/領域番号 |
19K24683
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
宮本 百合 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60794641)
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研究期間 (年度) |
2021-03-12 – 2024-03-31
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キーワード | 文化 / 感情 / 無常観 / はかなさ / 美的知覚 / 精神的・身体的健康 |
研究実績の概要 |
主に欧米で蓄積されてきた心理学の研究においては、人は喜びや誇りといった「肯定的な感情」を良いものとして最大化しようとし、不安や悲しみといった「否定的な感情」を悪いものとして最小化しようとし、そうした感情のあり方が精神的・身体的健康にも結びついているとされてきた。しかし、そうした知見は、欧米の歴史的・文化的背景に根ざしている可能性があり、陰陽的な文化的信念のある東洋では、結果が異なるかもしれない。とりわけ「無常観」が存在する日本においては、心理学において否定的とされてきた「はかなさ」や「もの悲しさ」の中に肯定的な意味や美しさを見出す感情様式が存在し、そうした感情様式が健康にも結びついていると考えられる。そこで本研究では、①「はかなさ」や「もの悲しさ」に肯定的な意味や美しさを見出す感情様式が見られるか、②そのような感情様式は、精神的・身体的な健康にどう影響しているのか、さらに、③そのような感情様式は、どのような歴史的・生態学的基盤に基づいたものなのか、といった点を検証する。2021年度は、「はかなさ」や「もの悲しさ」の中に肯定的な意味や美しさを見出す感情のあり方が存在するかどうか、またそうした感情のあり方が文化によってどう異なるかを検証するために、日本とアメリカの両方で調査を実施した。また、このような感情のあり方が、主観的幸福感や精神的・身体的な健康に結びついているかどうかを検証する調査を日本とアメリカで開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、日本とアメリカの両方で、できるだけ同じ条件下で調査ができるよう、一橋大学で被験者プールを立ち上げ、日米双方で、それぞれ200名以上の大学生を対象に調査を実施することができた。また、幸福感や精神的・身体的健康を測定する調査も開始し、現在データ収集を継続して行っている。コロナの影響が続く中で、生理指標を得るための対面での実験は開始できなかったものの、実験室と生理機器のセットアップを行い、実験を開始する準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
「はかなさ」や「もの悲しさ」の中に肯定的な意味や美しさを見出す感情のあり方が、主観的幸福感や精神的・身体的な健康に結びついているかどうかを検証する調査のデータ収集を、引き続き行う。また、客観的な指標を用いて感情様式を検証するため、生理指標を用いた実験を実施する。さらに、「はかなさ」や「もの悲しさ」の中に肯定的な意味や美しさを見出す感情様式は、どのような歴史的・生態学的基盤に基づいたものなのかを検証するため、多国間比較調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響が続く中で、生理指標を測定するための対面での実験が開始できなかったため、次年度使用額が生じた。2021年度に、実験室と生理機器のセットアップを行い、実験を開始する準備を整えることができたため、2022度に参加者への謝金として使用予定である。
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