本研究では、「はかなさ」と美的感情の関係を、調査や実験によって検証した。調査においては、移ろいやすい風景の画像を見た際にはかないと感じる人は、感動などの美的感情を感じやすく、さらにその関係は悲しみの感情が媒介していることが示された。「はかなさ」を実験的に操作した多国間比較実験では、特に東アジアにおいて、「はかなさ」が喚起されると、「悲しみ」の感情や美的感情が強まる効果が見られた。また、主観的な自己報告だけでなく、「はかなさ」を感じた際の生理的反応や、睡眠指標との関係も明らかにした。これらの研究から、「はかなさ」が「悲しみ」と美的感情に及ぼす影響の、多層的な基盤が明らかになった。
|