研究課題/領域番号 |
19K24692
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野島 孝之 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (80431956)
|
研究期間 (年度) |
2021-03-12 – 2024-03-31
|
キーワード | 新生RNA / ゲノム転写 / RNAプロセシング / 非コードRNA / RNAポリメラーゼII |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞核内で起こるRNA polymerase II (Pol II) 転写装置とRNAプロセシング装置のクロストークや非コードゲノム転写制御機構の解明を目標としている。また、RNAプロセシング機構が破綻している骨髄異形性症候群や腎臓がんなどの疾患細胞モデルを用いて、その異常ゲノム転写-RNAプロセシング制御を解析する。このアプローチにより、基礎的なゲノム転写制御機構とがん細胞増殖や細胞分化の解明に貢献する。
本研究における第一目標は新生RNA一分子解析法(Polymerase-Intact Nascent Transcript、POINT法)の確立であった。この目標はすでに達成できおり、POINT法を用いて哺乳類細胞でのスプライシングキネティクスや二つのRNAプロセシング(スプライシング-3'end RNA切断)間制御機構を明らかにした(Sousa-Luis et al., Molecular Cell 2021)。
また。転写終結機構の解析も順調であり、がんクロマチン環境下での転写終結破綻や抗がん剤処理下での未成熟転写終結由来の非コードRNAの解析をすすめている。2021年度は帰国後の研究室立ち上げに注力し、研究室設備を整備していた。本支援により基本的な実験設備等を整えることができた。それと同時に、非コードRNA転写制御に関する英文総説(Nature Reviews Molecular Cell Biology, 2022)を執筆し、分野内で高い評価を得ている。国際共同研究も精力的に行い、二報がpreprintとして現在公開中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた一分子新生RNA解析法を確立でき、RNAプロセシングキネティクスの解析も順調である。また、帰国後の研究室セットアップや大学院生・ポスドクのリクルートを順調に行い、令和4年度(2年次)からの本格的研究室スタートの準備が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したPOINT法を解析方法の中心とし、以下の課題に取り組む。 (1)RNAスプライシング疾患のゲノム不安定化機構の解明:RNAスプライシング因子変異体のゲノム転写やRNA品質管理に対する影響を網羅的に調べ、異常RNAスプライシングを介するゲノム不安定化機構を明らかにする。 (2)ゲノム転写終結機構とその破綻機構の解明:特定のがんや抗がん剤処理で引き起こされる転写終結破綻から、転写終結に重要なヒストン修飾、DNA配列、DNA構造やDNA修飾、クロマチン結合タンパク質などを調べ、転写終結機構を明らかにする。 (3)長鎖非コード転写産物エンハンサーRNAアイソフォーム同定と発現制御機構の解明:エンハンサーRNA発現制御機構の解明、さらにはその破綻と神経細胞特異的疾患の関係性を明らかにする。具体的には、疾患や細胞特異的なエンハンサーRNAの安定化を実験的に行い、網羅的にプロファイリングする。
|