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2019 年度 実施状況報告書

繰り返す干ばつは古代マヤの都市を衰退に追いやったか? ―極端気象の直接証拠―

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0018
研究機関立命館大学

研究代表者

北場 育子  立命館大学, 総合科学技術研究機構, 准教授 (60631710)

研究分担者 大森 貴之  東京大学, 総合研究博物館, 特任研究員 (30748900)
山崎 彬輝  福井県里山里海湖研究所, 研究部門, 研究員 (30845607)
中川 毅  立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (20332190)
那須 浩郎  岡山理科大学, 生物地球学部, 准教授 (60390704)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2023-03-31
キーワードマヤ文明 / 干ばつ / 極端気象 / 放射性炭素年代 / メキシコ / 年縞 / 気候変動
研究実績の概要

本研究の目的は、マヤの都市の衰退と、気候変動の因果関係を探ることである。
2019年度は、マヤの遺跡内にある湖 サン・クラウディオ湖で完全連続な年縞堆積物を手に入れることを目指して、1)機材の開発とテスト、本番に向けた機材の改良、2)現地での本掘削をおこなった。
1)採取する堆積物のクオリティは、後の研究のすべての精度や質を決定的に左右する。良質な年縞堆積物試料があってはじめて、本研究が目指す最高精度の編年と月単位の「古気象」復元を達成することができる。しかしながら、調査地の立地から、限られた最小限の資材と機材でこれを実現する必要があった。
そのため、本掘削のために安価かつ運搬が容易な機材と掘削システムを開発した。またロシア式サンプラーを改良し、現地での掘削に最適化した。このシステムのテストを日本国内の湖でおこなった。その成果をもとに問題点を洗い出し、機材の改良をおこなった。
2)上記の機材と掘削システムをもちいて、サン・クラウディオ湖で掘削調査をおこなった。まず、超音波による湖底探査と、表層付近の堆積物の産状を確認し、もっとも良質な堆積物が得られそうな地点を選定した。そして、人力掘削により全長約7mの堆積物の採取に成功した。合計67本の重複セクションを採取することができた。連続した年縞堆積物は上部約2mであった。その下部は、年縞、粘土、砂の互層であった。肉眼観察では、少なくとも2種類の異なるタイプの年縞が確認できた。すべての試料は、現地で写真撮影をおこない、日本へ持ち帰った。
同時に、年縞の成因を明らかにするため、水質調査をおこなった。年代測定に適した大型植物遺骸の選定や、花粉化石にもとづく気候復元のため、湖周辺の植生データも収集した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度の計画は、当初の予定通りに進めることができた。

今後の研究の推進方策

まず、堆積物コアどうしの詳細な対比をおこなう。同様のプロジェクトで実績のあるソフトウェアLevelFinderをもちいて、全員が相対誤差±1mm以内で厳密に深度管理をできるようにプラットフォームを整える。
すべてのコアに共通深度が入り次第、各分析に供するためのサンプルを切り分ける。同時に、肉眼で確認できる葉化石をすべて拾い上げる。葉化石の種同定をおこない、年代誤差の大きい水辺植物を除外し、14C年代を測定する。
長期的な気候を復元するため、花粉化石の安定同位体比分析をおこなう。限られた試料を有効に利用するため、まずはスタンダード試料をもちいた花粉抽出実験を開始し、この堆積物に適した処理のルーチンを確立する。より短期間に起こった古気候イベント(古気象)を復元するため、コア全体の蛍光X線分析をおこなう。特に年縞部分については、30μmの間隔(約3週間に相当)で分析し、堆積物中の元素の含有量を測定する。このデータをもとに、古気候・気象の復元と年縞の計数をおこなう。万全を期すため、薄片の偏光顕微鏡観察もおこない、異なる2つの方法で年縞を計数する。
これらのデータをもちいて過去の気候(とくに降水量)の変動パターンを数週間~1年~数百年の時間分解能で復元する。本研究で得られた気候データを歴史記録と比較することで、気候変動とマヤ文明衰退の因果関係を探る。
唯一の懸念事項は、蛍光X線分析、偏光顕微鏡観察、花粉抽出の習得のために訪れる予定にしていた海外の研究機関が新型コロナウイルス感染拡大防止のために閉鎖されていることである。安全を最優先に、今後の情勢を見極め、チーム内で密に連絡をとりながら対応策を探っていく。

次年度使用額が生じた理由

厚さ300μmにも満たないサン・クラウディオ湖の年縞堆積物から、気候の季節シグナルを抽出するためには、既存の蛍光X線分析装置(Itrax)を改造し、分析幅を狭めることで年縞が傾いていた場合のデータの劣化を防ぐ必要がある。当初の計画では、既存の検出器にガイドを装着し、分析幅を2mmに狭める予定であった。しかし、この方法では、検出感度が下がるという問題があった。
この問題を解決するため、Itraxに最新型のシステムを導入する。幸い、民間の助成金を獲得することができたため、予算の一部を翌年度に繰り越して合算することで同システムの購入が可能になった。これをもちいることで、高感度かつ短時間で、元素含有量の分析をおこなうことができる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (3件)

  • [国際共同研究] Aberystwyth University(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Aberystwyth University
  • [国際共同研究] University of Arizona(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Arizona
  • [国際共同研究] GFZ Potsdam(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      GFZ Potsdam

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公開日: 2021-01-27  

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