研究課題/領域番号 |
19KK0020
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 真利子 筑波大学, 芸術系, 助教 (10814767)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 夜 / 夜間音楽経済 / 生産と消費 / ヨーロッパ / 文化創造産業 / ナイトライフ街区 / ネットワーク分析 / COVID-19 |
研究実績の概要 |
本研究は夜に関する国内外における学術的研究の強い要請を踏まえ,「都市の夜」の実態の解明(夜間経済の発展・規制の強化に関する社会科学的アプローチ)と理論的探求(都市の闇や夜の意味・経験の変化,外出行為の変化に関する人文学的アプローチ)を通じて「都市の夜」の研究を飛躍的に発展させるため,海外共同研究者の研究機関に出赴き,探索的共同研究を行うことを目的とする。そのために,夜間経済の先行研究や事例報告の存在するイギリス(ロンドン)・ドイツ(ベルリン)・オランダ(アムステルダム)の各都市の「ナイトライフ街区」に注目し,フィールド調査によって当該街区に関する定量・定性的データを収集し「都市の夜」の実態の解明を行う。次いで,人文地理学・社会地理学・社会学の枠組みにおいて夜そのものに関する理論的探求をインターディシプリンに行う。 2021年度は,国際共同研究の成果として,国際学会4件(うち3件が連名発表)を実施した。なお2021年度はCOVID-19に起因し,「夜の街/ナイトライフ街区」や「飲酒行動」を伴う空間の存続が困難となった一方,文化創造の生産の場としての夜に注目し,2021年調査時点で在宅勤務を継続していたアムステルダム(5件),ベルリン(1件)・パリ(4件)・日本(30件)のアーティストへのオンライン・インタビュー調査を実施した。また,2021年度には,学術書籍(分担,うち2件が海外出版社)を4件発表した。今後は,前年度までの既往発表の論文・書籍化に加えて,インタビュー調査の分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は2022年度が最終年度に相当する。初回共同フィールド調査がCOVID-19を要因として中断された2019年初頭より,オンラインで定期的議論とデータ収集を継続してきた。特に都市閉鎖で最もコロナの影響が深刻であった2020年度は,ロンドンの夜間音楽産業従事者に対するインタビュー調査(19件)を,また断続的に調査渡航が困難であった2021年度はアムステルダム・ベルリン・パリ調査(10件)を実施した。また,2021年度までで,国際学会発表9件(うち,研究協力者との連名発表6件),国内学会発表13件,国際シンポジウム・WS 2件,論文8件(うち,国際論文は2件),書籍4件を発表した。なかでもオンライン共同研究を進めるため,3カ月に1回のペースで国際学会発表に挑戦し議論の深化を図った。 こうしたことから,国際的に注目を受ける夜の研究において,本研究の果たす社会的意義と併せて取り組んでおり,当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
なお,2021年度はコロナに起因し「夜の街/ナイトライフ街区」や「飲酒行動」を伴う空間の存続が困難となった一方で,文化創造の場が喪失されていく現状を捉えるため,夜に顕著なコンテンツとしての音楽に注目し,文化創造の生産の場としての夜に注目し,2021年調査時点で在宅勤務を継続していたアムステルダム(5件),ベルリン(1件)・パリ(4件)のアーティストへのインタビュー調査(オンライン)を継続する一方,①消費空間として注目される傾向にある夜間経済の「生産」的側面に焦点を当てる必要がある点,②音楽の消費を巡る2000年代の電子コンテンツの役割の増加と生産の変化へと議論が進展し,①②に関して,東京(30件)のアーティストへのインタビュー調査(オンライン)を開始した。当該調査結果の一部は2022年度上半期の学会2件(うち1件は国際学会,受理済み)で発表される予定である。また②に関しては,COVID-19を契機として注目されるNethnography(ネット人類学)を援用したNetnography(ネット地理学)の萌芽的研究を音楽における場所とバーチャル空間の再結節という観点から夜の国際会議にて2022年10月に発表した。 本年度は,昨年度の国際学会における既往発表の研究を論文化し,国際ジャーナルへと投稿することを目標とする。また併せて,国内発表と本研究のアウトリーチにも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナを含む世界情勢の不安定化のなか,渡航における現地調査からオンライン調査に切り替え海外調査を実施してきた。そのため,2022年度上半期において,既往研究の論文化を進めると共に,現地調査でどういったデータを補足すべきかを決定し,それに基づき1年度期間を延長し,本調査を継続予定である。
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