研究課題/領域番号 |
19KK0027
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
久保山 裕史 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90353672)
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研究分担者 |
山下 詠子 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (10733561)
岡田 美香 一般財団法人林業経済研究所, 一般財団法人林業経済研究所, 研究員 (30790703)
岩永 青史 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (60726107)
佐藤 宣子 九州大学, 農学研究院, 教授 (80253516)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 森林所有者 / 管理主体 / 日欧比較研究 / オーストリア / ノルウェー / ドイツ / 林業 |
研究実績の概要 |
森林所有者を対象としたアンケート調査を、3カ国において実施した。ノルウェーでは、4つの森林所有者組合のうち、林業適地のG森林組合と、急傾斜地の多いA森林組合を対象とし、105件の回答を得た。回答者の平均森林所有面積は100haを超え、比較的規模が大きいことが示された。また、G組合で所有規模の拡大傾向が顕著であり、後継者も多く、林業の魅力に差があることが明らかになった。オーストリアでは、9つの州のうち、林業が盛んで地形が比較的急峻なシュタイヤーマルク州の林業協同組合連合会の組合員を対象にアンケート調査を実施し、1,480件の回答を得た(平均所有規模35ha)。森林管理の意義や楽しさ、必要性を回答する所有者が多い中、人件費等の上昇によって林業経営が困難になっているという回答も多く、小規模所有者が林地を手放し、中大規模所有者が規模拡大している傾向が示された。ノルウェーと同様に、林地所有権の移動が活発に行われている実態が明らかになった。ドイツにおいては、ザールランド州高林森林組合から、アンケート調査の協力を取り付けることができ、実施方法について協議を開始した。日本においては、岐阜県恵南森林組合の組合員を対象としたアンケート調査を実施し、1,416件の回答を得た。これに加えて、R2年度にアンケート調査を実施した阿蘇地域森林組合と事業地域が重複している、NPO法人阿蘇ふるさと創生の会員となっている森林所有者を対象にアンケート調査を実施し、294件の回答を得た。所有階層別に分析したところ、3ha以下の小規模所有者は森林組合非加入で、森林管理をNPOに委託したいという意向が強く、20ha以上では森林の将来価値を上げたいという意向が強いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの感染拡大により、国内外における現地調査は延期せざるを得ず、林業経営や木材の伐採・流通・利用構造の実態解明がほとんどできていないため。なお、事前調査を行わずにアンケート調査を実施してしまったため、正確な解釈を行うためにも、現地における森林所有者を対象としたフォローアップ調査が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
アンケート調査結果の分析を進めるとともに、国内外の研究対象地において現地調査を実施し、林業経営や木材の伐採・流通・利用構造の実態解明を行う。また、アンケートのフォローアップのため、森林所有者を対象とした聞き取り調査を行い、成果のとりまとめを進めていく予定である。 上記については、国内では概ね実行可能な状況になりつつあるが、欧州の現地調査に関しては、いずれの対象国も危険レベルが引き下げられたものの、いまだにレベル2「不要不急の渡航はやめてください。」となっており、年度内実施は不透明な状況にある。このため、現地の研究協力者に調査を委託するなどの最終的な代替措置の検討も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの感染拡大によって、海外現地調査を行うことができなかったため。 次年度以降に、オーストリア、ドイツ、ノルウェーの3カ国を対象に、それぞれ2回程度の現地調査を実施し、熊本県阿蘇地域および岐阜県恵南地域の現地調査も実施する予定である。このほか、沖縄県の琉球大学において11月に開催予定のIUFROの研究集会にて成果発表を行う予定である。
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