研究課題/領域番号 |
19KK0029
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石川 知子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (20632392)
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研究分担者 |
西川 由紀子 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 教授 (70584936)
山形 英郎 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80222363)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 安全保障 / 経済グローバライゼーション / サイバーセキュリティ |
研究実績の概要 |
今年度は、次の点について理論的な面での検討を進めることができた。(a) 現在の経済グローバライゼーションと安全保障との間の緊張関係の高まり、特に既に各国・地域でみられる安全保障を理由とする貿易・投資に係る規制強化の流れをもたらした政治的・経済的要因。(b) 現在の貿易・投資自由化に係る国際法の枠組みが、かかる緊張関係に対処するに十分でなく、このことは、各国の規制強化への流れをさらに加速させかねないとの仮説を、安全保障例外条項の解釈が問題となった国際裁判所や仲裁廷、1947年GATT及びWTOの下での事例や判例の検討を通じて検証する。(c) 経済グローバライゼーションと安全保障との間の緊張関係が解消されない場合、これが長期的にもたらし得る政治的問題及び経済的影響につき検討する。 さらに、今年度は、上記の分析を、サイバーセキュリティの分野に当てはめ、サイバー特有の問題点として、「マーケット主導型」モデル(欧米型)と、「国主導型」モデル(中国、ロシア、ベトナム等)の検討を行い、サイバーセキュリティと経済グローバライゼーションとの間の緊張関係が生み出す様々な問題を、国際政治学、国際法学を含む学際的アプローチで分析するためのプロジェクトを進めている。国際政治学、国際法学各分野から、多国籍の執筆者(日本、米国、カナダ、ルクセンブルク、英国、スペイン、ポーランド)による編著、Tomoko Ishikawa and Yarik Kryvoi (eds.) Public and Private Governance of Cybersecurity: Challenges and Potentialを企画し、2022年4月、ケンブリッジ大学出版会と出版契約を締結した(2023年出版予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、申請時に計画していた海外調査は行えない状況が続いているものの、今年度は、サイバーセキュリティと経済グローバライゼーション、具体的には「サイバーセキュリティの脅威に対処するために、現在の国際的な法的・政治的枠組みの可能性(サイバー脅威の防止、保護、被害補償に関する国家および民間アクターの責任と役割の検討を含む。)を検討する」という目的に焦点を絞ることで、編著の企画が進行した。現在ケンブリッジ大学出版会と交渉中の編著(タイトル:'Public and Private Governance of Cybersecurity: Challenges and Potential')につき、編著者である研究代表者及び海外研究協力者と、各章の執筆者との間で、オンラインで会合を重ね、出版企画書を作成した(Tomoko Ishikawa and Yarik Kryvoi (eds.) Public and Private Governance of Cybersecurity: Challenges and Potential、2023年にケンブリッジ大学出版会から出版予定)。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終段階となる今年度は、これまでの分析を踏まえ、経済グローバライゼーションと安全保障との間の緊張関係に対し、現在みられる各国による個別の規制強化のほかどのような対応の可能性が考えられるか、特に、国際協力枠組みの構築可能性につき、国際法学、国際関係学、国際政治経済学の各視点を取り込んだ理論的検討を行う。さらに、構築した理論的枠組みを実務的に実行可能なものとするための実践的問題の検討を行う。特に、国際社会の構成員である国家、国際機関、企業、市民団体及び個人がそれぞれ果たし得る役割につき考察し、具体的提言を行う。成果物として、ケンブリッジ大学出版会からの編著出版が決定されているほか、コロナの状況を見つつ、国際会議も開催したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナによる規制のため、海外調査及び海外での国際学会発表といった活動が行えず、次年度に繰越となった。
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