研究課題/領域番号 |
19KK0033
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
濱中 新吾 龍谷大学, 法学部, 教授 (40344783)
|
研究分担者 |
秦 正樹 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (10792567)
横山 智哉 金沢大学, 法学系, 講師 (20806153)
土井 翔平 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 准教授 (30889134)
|
研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
|
キーワード | 旗下集結効果 / 国際紛争 / 世論 / 政治学実験 |
研究実績の概要 |
2020年10月31日~11月3日と11月8日~12日の2回に分けて実験世論調査をイスラエル、日本、アメリカで実施した。3カ国で共通となるヴィネット実験のデザインは研究分担者の秦正樹が行い、日本調査とアメリカ調査で共通する政治リーダーのキュー(手がかり)に関する質問の設計は研究分担者の横山智哉が行った。またイスラエル世論調査の質問項目設計は研究代表者の濱中新吾と海外共同研究者のYuval Feinsteinで分担した。研究分担者の土井翔平はプライミングに関するいくつかの質問を手がけた。 実験世論調査はWebサーベイ用プラットフォームQualtricsを使用したので、それぞれの研究者が自宅または本務校の研究室に設置したコンピュータにより、研究代表者のアカウント上で作成を行った。質問票作成はおおよそ3週間を要したが、その間のE-mailならびにmessengerやZoomによる研究メンバー間の連絡は密に行われた。その結果、本研究計画の研究種目「国際共同研究加速」の名に値する協働を成すことができた。 実験世論調査は仮想的な紛争事件が勃発した事に対する各国リーダーの演説を受けて、リーダーを支持するか否かの態度を測定する質問を中心に据えた。この質問への回答が旗下集結効果として操作化される。この調査では戦時の旗下集結効果だけではなく、コロナ禍における各国政府の対応と、対応評価に基づくリーダー支持態度も測定している。 2回に分けて収集したデータは、各メンバーにより自らの問題関心の下、分析が進められている。研究代表者は次年度に行う予定の日本政治学会における研究報告に向けて、報告論文を準備している。この他、研究代表者は2本の学術論文の国際誌採択に成功し、1本は公表され、もう1本は次年度に公開される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要にも記述したように、2020年10月31日~11月3日と11月8日~12日の二回に分けてイスラエル、日本、アメリカで実験世論調査を実施し、データ収集するとともに、期待される実験の効果を確認することができたので、「おおむね順調に進展している」と判断した。 この調査には、軍事的危機に直面した国民が政治リーダーを熱狂的に支持する旗下集結効果を測定するために、仮想シナリオを提示する形の実験を仕込んでいた。実験刺激は旗下集結効果が敵対勢力に対する怒りをベースに想起するのか、それとも恐怖をベースに想起するのか、さもなくば別の感情によって想起されるのかをメカニズムを特定する目的で設計されている。研究代表者はイスラエルのデータを中心に分析し、研究分担者が日本およびアメリカのデータを中心に分析している途中であるため、「おおよそ実験刺激が期待する方向の因果効果を捉えている」という事実のみを報告するにとどめておく。 アメリカ大統領選挙を挟んで2回の調査を実施したのは、大統領選挙の勝者が民主党のバイデンになることでイラン核問題をめぐる中東政策に変化がもたらされ、ひいてはイスラエルの国民世論に変化が生じる可能性を考慮してのことである。大統領選は自然実験と見なすことができるので、政権交代の効果も分析することになる。
|
今後の研究の推進方策 |
まずは収集した実験調査データの分析が急がれる。データは研究代表者、研究分担者、外国人研究協力者で共有しつつ、各研究者個人の問題関心に応じて自由に分析が進められることになっている。分析結果は研究論文にまとめられ、国際査読誌を中心に投稿される予定である。通常の戦時をめぐるリーダー支持態度だけではなく、コロナ対策の評価を介した旗下集結効果についてもデータ収集した。そのため、「コロナ・ラリー」と呼ばれる旗下集結効果の拡張分野についても分析が可能である。 また今後は旗下集結効果に関係、もしくは別の拡張的なテーマに関する実験世論調査を実施する予定である。具体的にはコロナ対策ワクチン接種をめぐるイスラエルと日本の差異に注目する。この集団免疫獲得プロセスの違いに注目しながら、ワクチン開発と接種の普及に応じて発生するFake Newsや流言飛語、ひいては陰謀論が、リーダー評価に寄与あるいは毀損する現象を捉えることを目的とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの世界的流行によって各国政府が国境を越える移動を規制したため、イスラエルを含む海外出張が不可能になったため。旅費に計上していた部分は使えなくなったため、調査の実査に必要な費用や実査のサポートをしてもらうためのRA雇用費、ならびに物品費などに転用した。次年度においても同様に実査費用の積み増しとRA雇用費、物品費に余剰となった旅費を転用する予定である。
|