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2020 年度 実施状況報告書

英国政府の公監査政策と公検査政策の成果と課題-わが国自治体の財政民主主義への示唆

研究課題

研究課題/領域番号 19KK0034
研究機関関西学院大学

研究代表者

石原 俊彦  関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (20223018)

研究分担者 遠藤 尚秀  大阪市立大学, 大学院都市経営研究科, 教授 (40411805)
井上 直樹  福知山公立大学, 地域経営学部, 教授 (90792359)
酒井 大策  常葉大学, 経営学部, 准教授 (80783761)
関下 弘樹  福山大学, 経済学部, 講師 (30824601)
研究期間 (年度) 2019-10-07 – 2025-03-31
キーワード公検査 / VFM監査 / 最少の経費で最大の効果 / External Inspection / VFM Audit
研究実績の概要

本年度は、官庁部門における外部検査を純粋に学術的な研究対象として位置付け、地方自治体の外部検査について詳細な考察を展開した。ここにおいて Howard Davis, James Downe, Steve Martin の研究成果(External inspection of local government : Driving improvement or drowning in detail?)は、英国の公検査に関する代表的な書物の1つである。本書の第一著者であるHoward Davis は、英国を代表する外部検査の研究者であり、バーミンガム大学やウォーリック大学に所属し、地方自治関係の研究所の所長を経験するなど、検査の理論と実践の双方に長じた研究者である。また、James Downe とSteve Martin は、カーディフ・ビジネススクールの教授として、現在も公共政策や公共経営の研究の最前線に立つベテラン教授である。本研究で考察したこの3名による共同研究は、英国の外部検査を専門的に取り上げた重要な研究成果として注目されてきた。
本年度の研究では、この研究報告の内容を忠実に再現し、彼らが地方自治体の外部検査において何を研究対象として、今後、何を研究課題として解決を試みるべきとしているのかを整理した。この整理を通じて、英国における公検査研究の嚆矢と今日に至る研究のベクトルを概観することで、VFM 監査や検査の今日的な研究の課題を確認することができた。以上の詳細は、石原俊彦著『VFM監査-英国公検査の研究』関西学院大学出版会、2021年3月の第5章に所蔵されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、以下の7点についての問題点の存在について整理を行い、今後の考察の展開へと関連付けることができた。よって、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
① 検査官が、検査対象となる組織にとって自分達の判断が有用で信頼できると見なされるために、必要な技術的知識と地域の状況に関する理解を有しているか。②現在の検査基準が、検査サービスの品質と費用との関係(費用対効果)において、信頼される判断を形成する所以は何か。③外部検査には、地域の優先課題、管理アプローチ、そして、政治的優先事項を考量するための十分な余地があるか。④既存の業績管理や業績測定の手法は、改善を正確にモニタリングできるような健全で信頼できるものか。⑤検査官は自らの活動を(他の検査機関の活動と)調整することができるか。もし、調整できない場合、地方自治体に対する断片的な検査結果はどのように扱われるべきか。⑥政府は、検査対象機関のサービス提供が失敗しているとみなされる場合、効果的に介入する能力を有しているかどうか。また、実行可能なサービス提供の代替的メカニズムが存在するかどうか。⑦ 外部検査の便益がコストを上回るかどうか。また、どのような状況であれば最大の価値を付加することができるのか。

今後の研究の推進方策

わが国の官庁部門が検査の先進事例として着目しうる取り組みに、英国における一連の外部検査制度がある。今年度は、英国における各種の行政サービスに対する外部検査制度を概観し、その現状と問題点を明らかにした。今年度の考察からは、検査の重複や検査人の専門的能力と独立性、さらには、検査の費用対効果の問題など、未解決の論点が検査の理論研究にはいくつも残されていることが確認された。また、英国における公検査制度の回顧と展望を展開すると同時に、検査の理論研究をより体系的に詳細に進めるうえで検討が必要とされる潜在的な研究課題を提示する内容を具体的に明らかにした。
その際今年度は、研究計画で当初予定された英国監査委員会のアーカイブ資料の詳細な分析に代わって、Davis et al. の文献を詳細に考察した。この研究における方向の転換は、英国監査委員会で長く調査研究部長を務めた Michael Hughes 博士の示唆によるものである、Howard et al. の文献渉猟に際しては、直接にHoward 教授からのアドバイスや薫陶を受けることが可能であった。
本研究では、以上の考察から、公監査と公検査を融合するVFM監査研究のフレームワークとして認識すべき主要な論点を10 点集約することに成功している。これらの論点に関する今後の理論研究は、わが国官庁部門等における行政改革と財政再建に、会計学が政策科学として寄与貢献する礎を形成するものである。
この10個の主要な論点(VFM 監査と検査の関係やVFM 監査と検査における価値実現の体系 をはじめとする)の具体的な内容については、石原俊彦著『VFM監査-英国公検査の研究』関西学院大学出版会、2021年3月の第6章において詳細な考察が展開されている。

次年度使用額が生じた理由

COVID-19 の影響で英国への海外出張が順延のために、外国旅費の繰り延べが生じたことにより次年度使用額が発生している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Public Sector Reform and Public Management Theory ―Cases of Japan―2021

    • 著者名/発表者名
      Toshihiko Ishihara
    • 雑誌名

      Public Management & Review

      巻: - ページ: 1-8

    • DOI

      10.1080/14719037.2021.1893093

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [図書] VFM監査-英国公検査の研究2021

    • 著者名/発表者名
      石原俊彦
    • 総ページ数
      317
    • 出版者
      関西学院大学出版会
    • ISBN
      978-4-86283-317-4

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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