研究課題/領域番号 |
19KK0041
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
橘 永久 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70301017)
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研究分担者 |
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30756599)
櫻井 武司 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40343769)
加治佐 敬 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (50377131)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2022-03-31
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キーワード | 災害復興 / 人的資本 / 長期効果 / 家屋損壊 / ネパール |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自然災害の長期経済効果を、子どもの進学選択・構成員の健康といった家計所得だけでは捉えきれない厚生変化も含めて、家計レベルで検証することである。そのためには、自然災害で家計が被った被害の程度を、できるだけ正確に把握する必要がある。 研究開始の本年度は、研究代表者が、2019年12月末から3週間ネパールに渡航した。目的は、2015年にネパール中・西部を襲った大地震(以降、ゴルカ大地震)による一般住宅損壊状況に関して、ネパール政府が多数のエンジニアを雇用して調査した大規模データ(以降、家屋損壊データ:対象1,052,948家屋)を入手することであった。家計別の家屋被災度を客観的に評価・記録したこのデータの入手は、本研究計画実行の第一の要である。 到着後、ネパール国立Tribhuvan大学所属の海外共同研究者と共に、ネパール震災再建委員会(National Reconstruction Authority: NRA)に家屋損壊データの利用を申請・受理された。長年協力関係にある海外共同研究者を通じて、1年以上前からNRAと交渉を進めていたこともあり、3週間の現地滞在期間中に家屋損壊データ全体を正式に受領することができた。ただしデータ受領時に、本データを利用した学術研究論文においては、ネパール人研究者を第一又は第二著者とすること、という条件が付けられた。議論する余地は無かったため、承諾してデータを受領した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、2019年度中に家屋損壊データ全体を入手することができた。以降2020年3月末まで、郡別・村落別に細分化されているデータファイルを統合するなどの整備作業を進めている。作業には、共同研究者間でデータを共有出来るようにするため、データ内の個人情報を削除する手順も含まれている。 なお、2018年に使用を特別許可されていた家屋損壊データのごく一部、西部6か村内の家屋損壊データを活用した論文を、2019年10月にSocial Science and Medicine誌に公表した。当該論文は、NRAにも共同研究の成果として提出した。
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今後の研究の推進方策 |
a) 家屋損壊データ全体を要約し、b) 家計の資産保有(富裕度)や社会的地位と被災の深刻度(ゴルカ大地震による家屋損壊程度)の間に相関があるかを検証する論文の作成作業を、7月末の完成を目指し、チーム内の若手研究者を中心に進めている。総計100万軒を超える大規模データであるため、使用中のパソコンでは処理に時間がかかりすぎることが問題となっている。パソコンの新調を検討するとともに、大規模データの効率的な処理法についての調査も進める予定である。 また、研究計画通りの2020年11月開始を目指し、山間部11郡762,106家屋のデータから、追跡調査の対象とする家計をランダムサンプリングする作業を開始する予定である。追跡調査の実際の開始時期に関しては、ネパールと日本のコロナウィルス対策の進展を見つつ判断することとする。
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