研究課題/領域番号 |
19KK0054
|
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
遠藤 野ゆり 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (20550932)
|
研究分担者 |
川崎 徳子 山口大学, 教育学部, 准教授 (00555708)
佐藤 桃子 島根大学, 学術研究院人間科学系, 講師 (10792971)
大塚 類 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (20635867)
SENNECK ANDREW 山口大学, 教育学部, 助教 (70769041)
|
研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2024-03-31
|
キーワード | 英国の教育 / 特別な教育的ニーズ / ファミリー・グループ・カンファレンス / 貧困 / 発達障害 / Ofsted Ranking |
研究実績の概要 |
2020年度は、Covid-19の影響で、予定していた英国でのフィールド調査が実施できなかった。そのため、日本国内において可能な研究として、福祉的支援を要する家族への支援を含めた英国の特別な教育的ニーズ事情と、背景にある英国の教育政策について、文献調査をおこなった。あわせて、英国と比較するための日本国内の諸教育現場の調査をおこなった。 具体的には、第二次世界大戦後のイングランドの教育政策について、政策内の位置づけ、特に税金投入にあたって諸学校に求められているアカウンタビリティの問題を検討した。また、Ofsted(イギリスの教育省)から最下位に評価付けされた公立学校の改革について検討した。さらに、OECD諸国の保育事情や国際水準の確認、虐待的な家庭の中で子どもと家族の自由意思を尊重する福祉的支援「ファミリーグループカンファレンス」について検討した。イングランドの教育・福祉政策は、日本の(公立)学校や公的仕組みとは異なる部分が多い。特に、費用はつねにその必要性や成果が評価され、その評価に応じて改善等が要求されるという強いアカウンタビリティ意識は、日本にはないものである。英国では地域の問題が学校にもちこまれ、学校がそのワンストップサービスとして機能する面があるが、それはこうした高いアカウンタビリティと、またそれに対する教員たちの強いストレスとセットであることを鑑み、日本に何を取り入れることが可能かを検討する必要が示された。 日本国内に関しては、貧困層の多い地域の公立小学校で、教師が学級を支える仕組みについてや、発達障害のある生徒を対象とした通信制高校における学校のとりくみ、さらに、地方の進路多様校における生徒のキャリア支援の実践などをおこなった。福祉の分野では、子ども食堂の取り組みなどを検討してきた。今後は、これらの調査結果を、イングランドと比較可能な形に整えていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
英国でのフィールド調査を研究の要としているが、Covid-19の影響で渡英がかなわないため。日本国内でのフィールド調査にも、6月まで実施できずにいたが、6月以降は順調に進められている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的に研究の計画に大幅な変更はない。ただし、2021年度も英国でのフィールド調査は困難と考えられる。そのため、2022年度のフィールド調査のための入念な準備の期間と位置づける。具体的には、日本国内の諸学校の調査成果を、英国の教育と比較可能な形にし、また書籍等の形に整えていく。 ところで、Covid-19 は英国でも猛威を振るい、これが英国に新たな「特別な教育的ニーズ」をもたらした。2020年の初期にはアジア系住民への差別が問題化し、移民の子どもたちの学習権が脅かされたり、ロックダウンの中での学校閉鎖が、学べない子どもや給食の食べられない子どもたちを生むなどした。そこで本研究では、こうした特別な教育的ニーズにイングランドの公立学校がどのように直面し、どのように対応し、問題を乗り越えていったかを明らかにすることも、本研究の中に位置づけることとする。2020年度はこのために、英国の公立小学校長へのオンライン調査を加える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
英国でのフィールド調査が、Covid-19 の影響により実施延期となったため。2022年度に当該の調査を実施するため、2021年度はこの費用の全額を使用するのではなく、一部は2022年度に繰り越す。
|