研究課題/領域番号 |
19KK0059
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
柏木 賀津子 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (40549052)
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研究分担者 |
家近 早苗 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (40439005)
池田 真 上智大学, 文学部, 教授 (10317498)
長田 恵理 國學院大學, 人間開発学部, 准教授 (40581690)
尾崎 拓郎 大阪教育大学, 情報処理センター, 講師 (40713813)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | スクールリーダーシップ / Teacher Agency / 国際共同研究 / ICTの教育応用 / グローバルポートフォリオ / フィンランドの教育 / 教科横断CLIL |
研究実績の概要 |
本研究は、グローバルスクールリーダーとしての資質としての向社会性、言い換えると、Teacher Agency(教員の意図を持って建設的に周囲に働きかけながら教育活動を計画実行する能力)の形成に必要な大学院における教育的介入はどのようなものであるかを明らかにする。研究は、日本とフィンランドの国際共同、およびInterdisciplinary Approach(異分野連携)により進め、Profile Action(個々の特性別に変容へのアクションを起こす)という枠組みを用いる。本研究は主に、1.リーダーシップ育成 2.教科横断(CLIL)の専門研究 3.ICTの教育応用、4.日本の現職教員の資質とプログラムによる変容 を明らかにする。フィンランドにおける共同研究者は、ユバスキュラ大学のT.Nikula氏、J.Moate氏 矢田匠氏で研究への示唆を得る。 複雑化する地球上の課題解決に向けて、21世紀型スキルを持つ児童・生徒を育てるために、「どのように学ぶか」を手続き的に教えることが出来る21世紀型教の教員育成が急務となっている。日本では、この課題に迫るため、プリサービス・インサービスの教員研修に取り組んできているが、中核リーダー研修・校長研修に「グローバル・スクールリーダー(以下、GSL)」の視点を取り入れた取り組みは極めて少ない。Teacher Agency形成に向けて教育的介入を行った結果の検証をする。21世紀型スキルやTeacher Agency(Biesta, Priestley, and Robinson, 2015)を中心に教育リーダー(Educational Leader)の育成について、Teacher Agency変容の要因を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィランドの教員は教育改革の中で教師としての高い自立性を持ち、EU共同におけるエラスムス制度等による教員間のグローバルコンタクトにより、教員自身がグローバル・マインドやグローバル・リテラシーを持つようになっている。改革案の策定には自国や他国の教育比較を科学的に行い、TALIS調査、PISA調査等の統計分析によるアセスメントを行っている。このような教育改革の成果に学び、研究者らの大学院では、データ分析と解釈、自らの学校のデザイン策定、日本国内外の国際バカロレアの学校訪問などをとおして、現職教員が国際社会への場数を踏むような教育プログラムを開発してきた。研究の主となるTeacher Agencyの変容を探るスケールについてもパイロットデータを取得した。これに並行して、「グローバル時代の教師55項目」を学部・院生140名に実施し、取組事前の傾向を把握することができた。2020年に向けては「21世紀型スキルを育てるグローバル教育プログラム」をNITS(国立行政法人)に申請し採択となった。自治体教育委員会との連携でこの本研究のテーマを進める基盤が整いつつある。 2019年度はリーダーシップを育成する試行プログラムとしてであったが、現職院生が、フィンランドの学校での理数の教科横断授業を行うとともに、共感と対話を中心に据えたフィンランドの校長研修について学んだ。また、自校において教育リーダーとして組織づくりの改善、教科横断などに取り組み、アジア等の学会でその成果を発表した。この発表では、教職員がリーダーシップを持つようになるには、職場での「メンター経験」「周囲の共感」「困難に立ち向かう」といった、従来にはないリーダーシップ育成のために必要となる経験が考えられた。研究者らはまた、オーストリアで開催されたCCLA学会に参加し、中欧における教科横断について大学と現場の共同研究の動向を探った。
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今後の研究の推進方策 |
以下について、推進する。
(1)日本型教育の強みである、学級の授業改革、およびリーダー研修を中心にした、グローバルスクールリーダー育成プログラム(GSLプログラム)を実施する。実施前・中・後で調査を行い、個としての教員は何をきっかけとして、リーダーとしての自覚や信条を持つに至り、教育のグリット(やり抜く力)を握るようになるのか、Teacher Agency形成の要因を探る尺度を開発するとともに、教育的介入に拠る量的・質的に変容を明らかにする(Teacher Agency 尺度開発・実証研究)。 (2)Teacher Agency形成の要素として、国際連携のもと、世界の教育の動向について科学的に分析し、三つの異分野(profile:A-GSLプログラム, B-異教科連携,C-ICT応用)について、理論と実践の往還で積極的に教員のTeacher Agencyを培うためのアクションを遂行する(教育的介入)。
新型コロナ感染症予防の影響において、国際学会への参加やフィンランドでのラウンドテーブルを実施することは困難であるが、一方オンラインシステムが発達し、主にZOOMによる大学院の講義への、共同研究者のオンライン参加が可能になっており、この可能性を探り、オンライン上のパネルディスカッションなどで研究の交流を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症予防のため、海外大学連携が滞り予定していた予算執行が出来なかった部分がある。オンラインによる会議を開催しながら継続中である。
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備考 |
本科研に基づく、大学院研究科、および連合教職大学院における、現職教員の修士課程において、グローバル視座をもつ変革型リーダーシップを育成するプログラム等について、取り組みや成果を発信しています。
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