研究課題/領域番号 |
19KK0061
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
芦沢 真五 東洋大学, 国際学部, 教授 (00359853)
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研究分担者 |
森 利枝 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (00271578)
花田 真吾 東洋大学, 国際学部, 准教授 (00635865)
関山 健 京都大学, 総合生存学館, 准教授 (90583576)
野田 文香 独立行政法人大学改革支援・学位授与機構, 研究開発部, 准教授 (20513104)
太田 浩 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 教授 (70345461)
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研究期間 (年度) |
2019-10-07 – 2023-03-31
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キーワード | 高度外国人材 / 外国学歴 / 資格認証 / 東京規約 / 資格の電子認証 / クローニンゲン宣言 |
研究実績の概要 |
2020年4月以降、諸外国の外国資格・学修歴評価(FCE)における電子証明書類の利用状況について分析をおこない、日本国内の大学を対象とする実証実験を行う準備をすすめてきた。8月8日には大学行政管理学会関東支部主催の研究会で、実証実験にかかわる発表をおこない、9月2日から4日に開催された国際教育夏季研究大会(RECSIE主催)においても実証実験の目標や趣旨の説明をおこなった。9月以降、国際基督教大学、芝浦工業大学、南山大学をはじめ5大学が参加する形で、実証実験を開始した。その成果として、2021年4月に国際基督教大学で日本の大学としては初めての電子証明書が発行されるのに続き、他の参加大学でも証明書発行が開始される予定である。 これに加えて、東京規約にかかわる内部勉強会、海外のNIC(National Information Center)およびFCE関係者へのヒアリング、フローニンゲン宣言の参加機関との共同研究を継続した。また、オーストラリア、カナダについてはFCEと電子証明書発行の動向について継続調査をおこなった。このうち、オーストラリアにおいては、すでに電子証明書の実運用が開始されてから4年が経過し、運用が定着しているのに比べ、カナダでは2020年6月にカナダ高等教育教務部門連絡協議会(ARUCC)が、入札方式によりシステムの担当機関を決めたばかりである。海外の取り組みを日本と比較しながら、実証実験の成果分析をすすめてきたが、その成果を、3月22日のThe Asian Conference on Education & International Development (ACEID)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍の影響を受け、海外での調査活動は当初の予定に比べて、限定的となってしまった。しかし、オンライン会議、Webinarなどを頻繁に実施することにより、オーストラリア、カナダの実務者や共同研究者とは活発な意見交換を行うことができた。出張や招聘が予定通りに実施できない反面、オンラインによる調査を継続して実施できたことは有意義であった。電子証明書にかかわる実証実験については、コロナ禍において国内外の大学でリモートワークが導入される中、紙ベースの証明書発行の限界を指摘する声が高まったこともあり、多くの大学関係者の協力を得ることができた。こうした観点から、本プロジェクトはおおむね順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては、FCEにかかわる国際比較調査を継続して、証明書類の電子化がもたらす新たな潮流を分析・把握する。特に、フローニンゲン宣言への参加機関を中心に、学生の学習成果にかかわる電子データは、学生自身の手で管理されるべきであるという、SSIという概念が浸透しつつある。SSIとはSelf-sovereign Identityの略語で、自己主権型アイデンティティーと訳されている。ユネスコによる東京規約が規定する「部分的な修学」「非伝統的な修学」などもSSIの概念と連動するものであり、実際に外国で学修歴や資格の認証において、SSIの概念を適応させていくか、について国際比較研究をすすめていく。 また、日本国内において推進してきた電子証明書の実証実験を継続するとともに、大学や専門学校などがもつ多様なニーズに対応したシステムの在り方を分析していく。これは国際比較を通じて、日本の高等教育機関に適合したシステムを模索するものであるが、他のアジア諸国にも示唆となりうる。 こうした研究成果を2021年8月に予定されている国際教育夏季研究大会(国際教育研究コンソーシアム:RECSIE主催)において発表するとともに、APAIEなどの国際会議などで海外共同研究者と共同発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍の影響により、出張を伴う海外調査、海外からの専門家の招へいが実施できなくなっているため、過去2年度にわたって執行できない経費が生じた。一方、オンラインを使ったヒアリングやWebinarを実施することにより、一定の研究成果を上げることができている。2021年度および2022年度においては、オンラインによる海外調査を継続しつつ、コロナ禍の状況が改善されるのを待って、実際の渡航を伴う調査、専門家の招へいなどを再開する。また、幅広い層の研究者、実務者、高等教育関係者に対して、研究成果の公表をおこない、国内におけるニーズ調査を行う予定である。具体的には、国際教育夏季研究大会(SIIEJ)などに協力する形で、国際比較研究の成果を公表し、国際教育関係者との意見交換をすすめ、国内ニーズの分析を行う予定である。
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